軒下の箱

やっているネトゲとか、何か書いたものとかをつらつらと。 不定期更新で行く予定

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大変遅くなりましたが、刃と魔法の使い方第一章の始まりです。
序章は彼の一日を書きましたが今回から予定通りに歯車を回せそうです。
それと散々魔法使ってるのに、今更魔法についての説明です。
……しかもこれで全部じゃないって言うね。
それでは、これがお暇つぶし程度のものになればいいですが……。

誤字脱字、質問等はコメント欄にしていただけると喜びます。


※注意事項

刃魔シリーズは一応私が著作権を持っていますので転載とかは勝手にしちゃだめですよ。
……する人なんていないだろうけど。
この物語はフィクションです、どう見ても。
狩咲の妄想とか満載でもよければどうぞ。





朝。
何時ものように起き、いつものように食事をして。
今日は傭兵稼業を休みにしたのだという事を、昨日泊った友人の顔を見ることで実感した少年は。

「はぁ?」

突然の来客の言葉に、ただそう返した。





刃と魔法の使い方
第一章「刃の在処」





突然の来客は鎧を纏った騎士。
腰には剣、背に盾を背負った彼は、親しい友人に相談するように両手を合わせて頭を下げた。

「お願い! この子を孤児院に入れてあげてくれないかな?」
「解るが、理由を言えっての。普通の子だったら手前で面倒見ろよ」

ウェルトはため息を一つ、『この子』とやらに目を向ける。
そこには淡い黄色のノースリーブに少し濃い黄色のミニスカート。
長い栗色の髪を持つ少女は確かに昨日男に絡まれていた少女だった。

「いやだから、この間連れてきた子だけど記憶喪失というかね?」

鎧に身を包んだ男が困った顔で溜息をつくと、ウェルトの目を見据えて口を開く。

「原因は不明、魔法が関与していることぐらいしかわからない。構成に幾重にも防御壁が張られてて『覗く』こともできない。正直お手上げ」
「魔法で封じられてるってところか。益々お手上げだ……ってまさか」
「そのまさか。『剣者』の力を借りようと思って」

剣を持つ賢者、という意味が込められたその呼び名。
ルーヴェを指すそれは一部の人間しか知らない。
本人が隠しているということもあるが、魔法研究において実践的な論文を書き上げる人物があのような人間だという事は信じられ難い。

「出来るだろうが、そこまでの代物だと変な罠が仕掛けられてそうで怖いな」
「そっか……でも」
「ああ、わかるよ。ここが一番安全だと言いたいんだろ? ……だけどな、下手すりゃ無関係の子供達まで巻き込むぞ?」

と、そこまで言ったところでウェルトが何かに思い当ったように頭を押さえる。
その顔は苦虫を噛み潰した後に厄介事を持ち込まれたかのような顔。

「もしかしてよぉ……? この地区担当になった騎士長って……」
「……ロリペド」
「もういい、解った。あんの糞豚まだ出荷されてなかったのか」

苛立たしげに呟いて舌打ちをする。
そしてそのまま目の前の騎士を睨みつける。

「おい、キルス。騎士団からの依頼ってことでいいか?」
「……金とるの?」
「ほう、ならこの女の子があの豚にあんなことやこんなことされてもいいってか? あいつのことだから縛って……」
「あーわかったわかった! 総隊長にお願いしてみる!」

ウェルトの言葉をさえぎるように、少年騎士は声を荒げる。
それを見てにやりと笑った少年は、キルスの肩を叩く。

「そうそう、初めからそうしてくれればいいんだよ」
「……なんだろう、目の前の人間を捕まえなきゃいけない気がしてきた」

裏路地に居る柄の悪い若者のような言葉を吐いた傭兵に、少年騎士は一つ溜息をついた。







「というわけで仕事を取ってきたぞ」
「鬼だ」
「非道だね」
「酷い」

朝の経緯を一通り説明したウェルトにかけられる四つの言葉。
それに悪びれる様子もなく。

「交渉術だ」

と少年は言いきった。
そしてそのまま、流れるようにその口から愚痴を漏らす。

「だがまぁ、本当にあの豚の手の届く場所に置いておくと豚のくせに食い散らかすからな……あいつ。少しは食い方(テーブルマナー)ってもんを知っとけよ」
「……ウェルト、女の子や子供がいる前でそう言う台詞吐かない方がいいと思うんだけど」
「表現直接的なものにはしてねえだろ?」

孤児院の長テーブルの椅子に座り、悪びれずに笑うウェルトに対して、ルーヴェはため息一つ。
体面に座っている女性陣はもう聞かないふりを決め込んでいる……わけでもなく。
フィルはいつも通り、ミシェルは顔を僅かに染めてどこかを見ている。
そして件の少女は何のことか分かっていないようだった。

「……ま、ルース神父に話は通したから大丈夫だ。一応患者、って扱いだしな。名前以外のほぼ全てを忘れているから重病人扱いでもおかしくはないが」

ウェルトは隣に居る相棒に囁く。
ちなみにルース神父は魔法に関する治療を専門に行う医師をしている。
傷口を再生させる、というものは使えないが再生を早める程度や、異物を取り除くぐらいはできるのでそれ専用の医者という事となっている。
さらに言えばこのような魔法に関する異常も対応可能。
つまるところ、ここには魔法による異常に関する専門家が二人いるという事になる。
そこのところもあって、キルスは此方に預けようとしたのだろうとウェルトは考えて、ため息を吐く。

「残念ながら、退院予定はないがな」

そう。
結局二人の手でも原因は分からなかった。
魔法の防壁は外せても、中を覗いてみれば何もなく。
何が原因なのか、そこに戻ることとなってしまった。

「……なぁ? 防壁の意味わかるか?」
「解らないね。何も守るべきものがないのに、構築する意味がない。忘却に関する術式が組まれているのかとも思ったけど、実際

は空っぽだったし」
「だよな。空の箱を鎖で縛って鍵をかける意味なんてない」

もう打ち解けたのか、少女は口数少なげながらもミシェルとフィルと共に居る。
これは孤児院という特殊な環境下のなせる業か、そう考えながらも少年二人は少女の状態について小声で話し合う。
彼女たちを話し合いに参加させないのは、これは下手すれば二人だけで解決しなければならない案件になる為。

「しかも、どうやらどこからか逃げ出してきたってわけでもなさそうだしな。……外傷が、全くない」
「うん、昨日傷一つ負ってなかったし、今もね。可能性としては逃げ出してきた可能性もあるけど、低そうだね」
「わけがわからないな、本当」
「だね。どうしようか?」
「……解ってんだろ? 相棒」
「解ってるけどね? 相棒」

そこで二人は口端を持ち上げるように笑って。
静かに、拳をぶつけあった。







翌日。
もう既に、昨日来た少女がここに馴染み、無口で表情をあまり変えることがないながらも、周囲はそれを受け入れている状況を微笑を浮かべてルースは眺めていた。
それと同時、何かを決意したようなミシェルに対しては見守るような視線を投げかける。

「ねぇ、ウェルト」

決意を込めて話しかけた相手は黒髪の少年。
シスター服の胸元を握り占めて、何かに耐えるようにして声を絞り出した。

「何だ? ミシェルが俺に用とは珍しいな?」

ウェルトの言葉通り、ミシェルが彼に用があるというのは珍しい。
別に親しくないとかそういう意味ではなく、ウェルトの担当が外部からの資金調達であることと、彼女の役割が家事全般という住み分けのせいである。
だからと言って、ウェルトは少女の様子がおかしいことに気がつかないわけもない。
おどけた様な声音と、口端を持ち上げるような笑みにミシェルの緊張は解され、いつもと変わらないように声が出せるようになっていた。

「何か嫌な言い方だよ、それ……。ウェルトはさ、マリーさんが戻ってくるってこと聞いた?」
「おお? 戻ってくるのか。そいつはめでたいな。ったく、あの馬鹿貴族どものせいで酷い目にあったな」

ウェルトが舌打ちも露わに悪態を吐く。
マリー、というのはルース神父の妻であり、この孤児院の母代りとなっていた人物。
だが、三か月前にとある貴族が飼っていた魔物が町中で暴れまわるという事件が起きた。
その時に子供達をかばったマリーは怪我を負い、入院することとなった。
ただの怪我ではなく、魔物の毒が傷口から入っていた為に治療に時間がかかってしまったのだ。

「……でね、あの時思ったんだ。私にも、力があればって」
「俺らも同じだ、あの時。『あの場に居なかった』ってだけで何もできなかったしな」
「ううん、私はあの場に居ても何もできなかった。だからね……私は力が欲しい。ウェルトやルーヴェ、フィルみたいに、傭兵になりたいの」

真剣な目でウェルトを見つめるその瞳。
そこには怯え、そして意志が混在する光を湛え。
静かに、黒の双眸に返していた。

「いいのか? お前の忌避する力を使う事になる、周囲に公表することになる。お前に魔法は使えない。あるのはただその『望んで与えられなかった』力だけだ。……それを存分に使うとしても、周囲の人間の恐怖の目がお前に突き刺さるとしても、お前はそれを望むのか? そして俺に、お前にそんな苦行の道を歩ませる為に背中を押せというのか?」
「うん。もう私は私って、決めたから」
「……解った、だがまずはそれ相応の知識を得てもらう事から始めねえとな。おい、そこのルーヴェ、ちょっと来い」

親友を呼ぶウェルト。
フィルや件の少女、子供達と話していた彼がその言葉にやってくる。

「何?」
「講義開くぞ。そこの暴力娘が決意したからな。今日一日で戦闘可能なぐらいの知識をつけさせる」
「なるほど、そういえばヴェル君もそんな時期?」
「だな。あとはあの子にも教えておいた方がいいだろ。何があるかわからん以上、覚えていて損はねぇ」
「え? え?」

あらかじめ決まっていたかのように話し合うウェルトとルーヴェ。
疑問符を頭に浮かべる少女を見て、ウェルトは口端を持ち上げて笑う。

「全く、お前は決意すんのがおせえんだよ。ルース神父の頼みで結構前から準備してるってのによ」
「え……あ……」
「手前は変な柵からやっと抜け出せたんだ。これからは自分のやりたいようにやればいい、回りの目何か気にすんじゃねえ……俺らがいるしな」

呆けたミシェルの頭の上に置かれた手。
少女はその手の暖かさを感じて。
静かに、涙を一筋だけこぼした。






「というわけで、今から魔法講義を始める。……正直に言っちまうと、ルーヴェが教えるってのは内容と不釣り合いって感じなんだが」

教会の一角を利用して、椅子に座った四人の前で黒髪の少年が口火を切る。
金髪の少年はその隣で苦笑していた。

「……そこまで凄いの?」
「んー、ミシェルは聞いたことない? 剣と知を持つ賢者、もしくは剣者って」
「確か移動中の紋章詠唱についての論文を書いたりしてる」

魔法に関して疎い人間でも知っている有名人というものが存在する。
それは大抵二つ名という形で知れ渡ることが多く、その二つが同一人物を示す二つ名だとミシェルもヴェルも理解していた。

「そ、それがアレ」
「え?」

と、軽い調子でフィルが指さす先には苦笑し続けているルーヴェ。
少女は首をゆっくりと、ウェルトに向ける。
軽く頷く少年。

「えええええええっ!」

途端、少女の叫び声が響き渡った。
それを楽しげに見たウェルトは引き続きヴェルの方へと視線をやる。

「ヴェルは驚かないんだな?」
「……呆けてる」

その言葉通り、空いた口がふさがらないという言葉を体現するかのような顔でヴェルは答えると、それを少女に見られていることが恥ずかしかったのか慌てて口を閉じる。
それを見て益々ウェルトの笑みは深くなる。

「アテリア、今の名前みたいなの聞いた事はあるか?」
「……無い、みたい。ごめんなさい」
「気にすんなよ。俺らは仕事でやってることだからな」

申し訳なさそうに俯いた記憶の無い少女……アテリアと暫定的に付けられた名を持つ少女はその言葉と頭に乗せられた手の感触にふわりと笑う。
その笑みを見て、ヴェルは僅かに赤い顔をさらに赤く染めたのだが、それには二人の少年以外気がつくことはなかった。

「ま、とりあえず一通りお前らの驚く顔が見れたから講義再開な」
「……性格悪い」
「仕事で、特に相手にする場合もっと悪くなるよー」

ミシェルとフィル、二人の会話を無視して、ウェルトは皆を見まわして語る。

「まず、魔力ってのはこの世界に空気と一緒に溢れてるわけだ。俺らはそれを自分の中にある容器に空きがあれば取り込む」

言いながら、テーブルの上に透明な瓶を置いてその中にガラス球を半分ぐらいまで入れる。

「このガラス球が魔力、この瓶が人の持つ魔力の入れ物だと思ってくれ。人は大抵この瓶から魔力を取り出して使うことしかできない」

そう言ってウェルトはガラス球を瓶からいくつか取り出して見せる。
皆、その手の中のガラス球に視線を集中させている。

「そしてこうして魔力を取り出して形を成すのが……魔力を扱う方法、魔法だ。……ここらは基本だから解っているだろ?」

講師二人の問いに生徒二人は頷き、一人はやや遅れて頷いた。
それを確認して、今度は金髪の賢者が口を開く。

「次は魔法の使い方だけど……。簡単に言えばこれは自分の中にある『魔力が通る』為の道を自分で自覚することが必要なんだ」

ウェルトの手からガラス球を一つとると、それを軽く転がす。
それはしばらくはまっすぐ進むものもいつしか横に逸れていく。

「魔力はこうして通り道がなければこんな風に真っ直ぐに行かないからね。ただそれだけでは意味がない。でも人が持つ魔力の通り道に通して上げると、魔法っていう形になって出てくるんだ」
「……つまり、体の中から外に出すための道がどこにあるか自分が知っておかないと、そこに魔力を通すことができないってこと?」
「そういうこった、そしてこの道はいくつかあって『どの道に通すか』で魔法の属性が決まる。詠唱はその『どの道に通すか』を自分自身に決めたってことを知らせる意味と、この世界に『どのような形で魔法を出現させるか』を決める為のもんだ」

ルーヴェの言葉に確かめるように呟いたミシェルに対して、ウェルトは引き続いて説明をする。
ミシェルの要約が分かりやすかったのか、少年と少女はなるほど、と言ったように頷いている。

「つまりは舵取りだ。で、ここからが問題なんだが……」
「うん。どうやって魔法を使えるようになるか。それはさっき言ったとおり自分の中にある魔力の通り道を見つければいいって言うんだけど……ね」
「俺なんかは一か八かの博打でやった口だが、流石にそれはできねえからな。……ほら、全員この瓶から一個づつ持ってけ」

先ほどまで説明に使っていた瓶を指さしてウェルトは三人に促す。
それに従い三人がガラス球を手に握ったのを確認して、ルーヴェが再び説明を再開する。

「今から、その道を自覚できるようにするから……。皆、目を瞑って」

その言葉に従い三人がガラス球を握ったまま目を瞑る。
途端、ガラス球が淡く発光を始める。

「そのまま落ちついて……。自分の中からそこに自分の血を流しこむようにイメージしてみて」

その言葉が終わった瞬間に、三人が握っているガラス球が一回だけ強く光ると、それが収まる。
目を瞑っていても光っているのがわかったらしく、三人は目を開いた。

「たぶん何かが自分の体に流れた感覚があるよね? それが皆の魔法の通り道……感覚で何となくわかる程度だけど自覚できるんじゃないかな?」
「お、おう。何となくだけどわかるぜ」
「……うん、わかる」
「私はわかっても……意味がないのだけど」

三者三様の反応を返す。
と、ここでウェルトが補足を加える。

「ちなみに、ミシェルが意味がないって言ってるのはだな。ミシェルのは俺と同じで普通の魔法の道が存在しねえんだ。その代りに、ミシェルは肉体強化魔法しか使えない道が、俺は古代魔法の転移しか使えない道ができてる。ミシェルの場合はさらに特異体質ってことで、その肉体強化魔法の道に常に魔力が通されて発動しているってところだ」
「……ってことは、ミシェルねーちゃんがいつも力仕事ばかりやってるのは」
「適材適所。全力なんか出してみろ? 昨日の朝だって俺の部屋のドア……」
「だから、それは言わないでって言ってるでしょ!」
「わりぃ、聞いてなかった」
「あ・ん・た・はぁぁぁぁっ!」

唐突に始まるミシェルとウェルトの鬼ごっこ。
ヴェルとフィルはいつものことと呆れ混じりに笑顔を浮かべ、アテリアはきょとんとそれを眺める。
ルーヴェは、その全てを優しい笑みと視線で見守っていた。

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狩咲 佐倉

Author:狩咲 佐倉
ネトゲとかいろいろやってます。

このブログの更新頻度は確実に遅くなる、だろう。




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