軒下の箱

やっているネトゲとか、何か書いたものとかをつらつらと。 不定期更新で行く予定

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刃と魔法の使い方、更新です。
その1の方も微妙に変更してますが、話の大筋は変わっていませんので態々見直す必要はないと思います。

一気に新キャラを増やした為、話が分かりにくくなってそうで不安な気がしていますが……。
うう、上手く書けるようになりたい……。

そして今回はさらに新キャラと伏線を分かり易く設置、分かり易いのはともかく分かりにくい伏線を落としそうで怖い。
さらに今回は表現がさらにちょっと……アレです。
うん、アレ。
いろんな意味でアレ。




※注意事項

刃魔シリーズは一応私が著作権を持っていますので転載とかは勝手にしちゃだめですよ。
……する人なんていないだろうけど。
この物語はフィクションです、どう見ても。
狩咲の妄想とか満載でもよければどうぞ。











「……ウェルト」

道の自覚、そして実際に魔法を使ってみる、その他補足説明を含んだ魔法の講義が一通り終わり、講師役の二人は今教会の裏という誰も来ないような場所に立っている。
そして先に口を開いたのはルーヴェ。
何か言いたげに視線を向ける彼に、ウェルトは苦笑して問う。

「……ぼかして説明しなかった点についてか?」
「いいのかい? 言うにはいいタイミングだったと思うけど?」

ウェルトは日が眩しいとでも言うように、手を日に翳して目を細める。
それを横から見るのは彼の親友であるルーヴェのみ。

「魔法ではない魔法、か。……別に、その背景、その原因まで解るわけねーのにな」
「そもそも、それを信じれる存在の方が少ないと思うけど?」
「……それもそうか」
「そこだけは気楽に考えていいと思うよ。……僕から言えるのはここまでなのが心苦しいけど」

珍しく苦々しい顔をしたルーヴェが目を向けるのは、この王都に存在する白い城。
王と女王と王子と王女が暮らしているはずのそこを見つめていた彼に、今度は横から声がかかる。

「お前も気楽に考えていこーぜ?」
「……無茶を言わないでくれよ」
「それもそうか。背負っているものがそっちの方が大きすぎる」

ウェルトは呵々と笑い、腕を上へと向けて背筋を伸ばす。
その背を見て、ルーヴェは静かに目を瞑ってから、開く。

「いや、大きさなんてものは関係ないと思うよ。ところで……ウェルト、今辛いよね?」

口調こそ軽いが、その言葉は何かを確かめるようなしっかりとしたもの。
ルーヴェの顔は笑顔を形造らず、瞳は細く射抜くように振り返ったウェルトに向けられる。
体を向きなおし、苦笑を洩らした少年は。

「ああ、結構な」

そう一言だけ、親友に告げた。
しばしの沈黙。
それを破るのはウェルト。

「どうしたものかね。本当」
「僕としては諦めてほしいと思いながらも、どうにかしたいとも思ってる。……本当、どっちつかずだ」
「仕方がねえよ。ある意味板挟みになっているわけだからな」
「それこそ君もだろう? ウェルト、いや……『    』」
「……そっちの名前で呼ばれたら嘘吐けねえだろうが。ああ、その通りだよこの野郎」

口調こそ乱暴でありながらも、その顔には笑みが浮かんでいるウェルト。
対して苦い顔をしてから空を見上げるルーヴェ。

「僕は、ルーヴェルト・『   』・『    』として約束する。時が来た時、僕は全力で君の味方になる」
「……いいのかよ?」
「構わない。……とはいっても、君の手を汚させたくない思いもあることはわかってほしいけど」
「ああ、善処はするつもりさ」

再び沈黙。
そして再びそれを破るのは……。

「ところで、ヴェルがアテリアに仄かな好意を寄せてるわけだがどうする?」
「……ウェルト?」

今までの重苦しい空気から一転して、どう見ても出歯亀をしそうな親友にジト目を向けるルーヴェ。
それに慌てることなく、胸を張って彼は言いきった。

「他人の恋愛程、見ていて面白いもんはねえぞ?」
「いやだからさ……」
「大丈夫。見守るだけだ、見守るだけ」
「どう見ても見守るだけに終わりそうにないなぁ」

ため息一つ。
どうにかしようとは思いつつも、どうにもならないんだろうなぁとルーヴェは心の中で諦めた。






「何だこれは? なぁ? 手前はっきりとわかりやすく、俺にも理解ができるように一から十まで説明しろ! できるよな? できねえなんて言わせねえぞ?」

夜。
夕食も終わった頃に来た来訪者に対して、ウェルトは今首をつかんだまま片腕で釣りあげるという歓迎をしている。
普段ならミシェルやルーヴェ、フィルあたりが止めるはずなのだが今彼らはそっちの方を見ないようにしている。
その理由として、ウェルトの顔が子供が見たら泣き出しそうな程の怒りをむき出しているからで、ルース神父は早々に子供達を退避させている。

「だ、お、おちっ、おちっ……」
「ああっ!? 手前が落ちれば俺も落ちつくって言ってんだろうが!」
「いって、な……」

必死にウェルトの腕を叩くのは、少女を孤児院に連れてきた騎士……キルス。
彼の意識が薄まりかけたところで、ウェルトは腕を乱暴に下ろした。

「で、説明しやがれ。下手な説明したら……撃ち込むぞ?」
「げほっ、ごほっ……と、とりあえずソレは僕のせいじゃないから」
「阿呆、もしそうなら問答無用で死人(ゾンビ)ですら生き返らん程の体にしてるっての」
「……え、えっと、その服の一部は僕と同じ騎士団の人からだけど」

ウェルトの目が本気だったのを気にしないようにしながら、キルスは弁解をする。
その視線の先にあるのは幾つもの少女用の服。
着ていた服だけじゃ悪いということと、孤児院への寄付という事で持ってきたのではあるが……。

「で?」
「布面積が少ないのとか、え、えっとその……変なのは全部あの」
「……了解、解った。あいつの家を教えろ。燃やしに行く、本人毎。もしかしたら焼死体には幾つか穴があいているかもしれねえが、見なかったことにしてくれ」
「止めてくれ! 僕に君を捕まえさせないでくれ頼むから! どうせ捕まえられないし!」

暴れるウェルトを抑え込むキルス。
流石にそれは見かねたのか、ルーヴェが止めに入った。

「まぁまぁ、キルスがやったわけじゃないみたいだし」
「……燃やせばよかったんだよ、あんなもん」
「いや、でもなんか勿体ないし……」

言い訳するように弁解する騎士に、ため息を深く吐く少年。
彼の生い立ちが解るからこそ、その考えは至極真っ当なものだと頭の片隅で理解しつつも、感情はどうにもならない。

「仕方がねえ。アテリア、その中で気に入った服があれば……」

ウェルトが振り向く。
その瞬間彼は固まり、その他の四人もそちらに顔を向けて固まった。
今まで少女はその服の山を、その場にいる全員の後ろで漁っていた。
だからこそ、気がつかなかった

「……その服、着たいのか?」

何とか声を絞り出したウェルトの問いに対して、こくんと頷く少女。
何とか、というのは比喩でもなんでもない。
その原因としては、少女が手に持った服を着る為に今着ている服を脱ぎかけていたことで……。
少女の下着姿をその場にいる全員が、見ることとなった。

「悪い、ミシェル、フィル。頼んだ」
「わ、わかった」
「りょーかい」

比較的早く我を取り戻したフィルと、まだ少々動揺が残っているミシェルがアテリアを連れて部屋へと向かう。
去っていく三人の背中を見送って、ポツリと一言。

「メイド服は確かに動きやすくて作業にはいいけど……」

ルーヴェの一言に、はっと何かに気がついたウェルトは顔を引きつらせながらその場にいる二人に提案する。

「おい、ここから逃げるぞ」
「ど、どうしたんだよウェルト?」

何かを察したルーヴェとは違い、キルスは疑問の声を上げる。
ウェルトとルーヴェが顔を青ざめるような事態、そういうのに遭遇したことのない彼は半ば珍しいものを見たとの感想しか抱いていなかった。
……この時点では。

「キルス、お前は知らないだろうが。ミシェルはあれでいて、女の軟肌を見た男は不可抗力でも全員死ねっていう思想の持ち主だ。今は動揺しているからなんとかなるが……あとは、解るな?」

重々しい口調で語られた言葉。
いたって真剣な表情で語られるそれ。
この事態に巻き込まれていない第三者であれば阿呆らしいと一笑できるがここにいるのは当事者三名のみ。

「何としてでも逃げないとっ!」
「ああ! 三人で、生き伸びるぞ!」
「うん、絶対。生きてまた会おうね!」

三人がっちりと握手を交わして、教会から駆け出す。
数刻後、教会で獣の如き怒号が響き渡ったことは近所の噂となったのだが……それはまた別のお話。







王都。
とはいえども歓楽街というものが存在する。
時には兵士の慰めとなり、時に沈んだ心を浮き上がらせる娯楽を提供する場所。
その性質故に、昔は治安が悪いことで有名だったが今ではそれなりに良い。
ただし、それと引き換えにこの場所では一つの噂が存在し、一部の者に恐怖をまき散らしている。
ブラッディアンガー、『血塗れの怒号』という存在が。

「というわけで、逃げてきたわけだが」
「よりにもよってここに逃げてくることになるなんて……。キルスなんてほら、顔を赤らめて俯いてるよ?」
「んな、生娘じゃあるまいしなんて反応だ。お前本当に男か?」
「だ、だって僕こんなところ来たの……初めてだし」

そんな歓楽街を三人の少年が歩く。
二人は堂々と、一人はおどおどしながら歩いている為に、傍目には危ない遊びにいざなう二人組といざなわれる一人という構図に見えているらしい。
しかし、一部の、二人組の顔を知っている人間から見るとそれは違うと理解している為、向けられる視線も好意的なものになる。

「あら、ウェルトにルーヴェじゃないの。ご無沙汰ねぇ?」

赤い、透ける生地で作られたドレスを身に纏った見た目20台の女性がしなを作りながら声を掛ける。
その顔に浮かぶのは蠱惑的な笑みであり、見た人間が思わず蕩けるのも致し方がない。
実際、騎士であるはずのキルスも少々意識が持って行かれそうである。

「……リリーか。毎度毎度言ってんだろ? 俺はこーゆーところ利用しちゃいけねえ年齢なんだっての」
「でも、ミルが寂しがってたわよ? 私も寂しかったけど」

この会話を耳にしたのか、周囲に歩いていた男達の気配が変わる。
どういった気配に変わったか、簡単に言ってしまえば『うちのアイドルを呼び捨てとはいい度胸じゃねえか』という気配。
だが、ウェルトはそれを視線と共に殺気を軽く宛てるだけで威圧。
本能的に何かを察したのか、男達は気配を弱めて行った。

「ミルさん元気ですか? 僕としても様子を見に行きたかったんですけど、なかなか」
「元気よぉ。でもま、ルーヴェはお相手いるから難しいものねぇ」
「あ、いや、えーと……」

口ごもるルーヴェを楽しそうに笑うリリーと呼ばれた女性。
その笑顔は先ほどのものとは違い、悪戯が成功したような少女の笑みだった。
結果、さらにそれに見惚れる男がいるわけだが、それを間近で見たウェルトは一緒になってルーヴェをにやにやと眺めるだけだった。

「ま、そこら辺にしておこうや。キルスが空気に中てられてちょっとばかり朦朧としているからな」

ひとしきり笑ってから、ウェルトは先ほどから顔を赤らめたまま虚空を見ている少年騎士に目を向ける。
キルスは、元々農業中心で生活を行っていた村から出た、所謂田舎騎士である。
その為、こういう場所に来るのが初めてどころか、女性に対して免疫が存在しない。
ミシェルや、フィルは面識があるのでどうにでもなるが、こう薄着の女性が行き来する空間は彼にとっては異世界に近い。

「あら、大丈夫ぅ?」

具合を見ようと、リリーがキルスに近づく。
すると、キルスの顔が林檎の如く赤くなる。

「だ、あ、だ、大丈夫、です」
「……軽い女性恐怖症だな、お前」
「あら、駄目よぉ? 女の子に慣れないと、色んな意味で」

再び蠱惑的な笑みを浮かべ、リリーはキルスの腕とって引っ張る。
騎士故に、女性に乱暴な事が出来ないキルスは、力任せに振り払うこともできずそのまま牽引されていく。
それをしばし見送ってから。

「行くか、頼みこむ手間が省けた」
「……無事に帰れるかなぁ。キルス」
「大丈夫だ。どうせ失うものは一つだけだろ」
「ウェルト、下品」

そんなやり取りを交わしながら、二人は後についていくことにした。




歓楽街に存在するとある建物。
ある者は天国と言い、ある者は女の館と呼び、またある者は……。

「……ルーヴェ、先に入る気ねぇ?」
「そっちこそ」

キルスとリリーが消えて行った扉の前。
二人の少年は入るのを躊躇っていた。
ここは別に、男に一夜の夢を見させる女が集う場所ではない。
ある意味そうかもしれないが、この場所にあるべきそれではない。
否、一部の男にとってはそういうものであるのかもしれないが。

「女だらけの空間って言うのも、ある種の結界だよな。入る気無くす」
「毎回言ってるきがするよ、その台詞」

毎回同じやりとり、だからこそこの後の展開も二人には予想ができていた。
しかし、頭で理解はしてあっても、感情が理解できないことも多い。
これもまた、その一つ。

「……適当に裏宿を」

踵を返そうとした途端、二人の背後で扉が開く音とともに悲鳴にも近い声が響き渡る。

「あ、ウェルトさんにルーヴェさんが逃げようとしてる!」

警報を告げる鐘の如く、それはその館全体に響き渡ったようで。

「何!? 私達の恩人を逃がすんじゃないよ!」
「うん! 絶対に掴んでるからね!」
「私も行く!」
「私も!」

次々とそんな声が聞こえてくると共に、最初に警報を発した少女が二人の袖を必死に掴む。
ルーヴェは女性に優しく、を叩き込まれている為に腕を振り払う事が出来ず。
ウェルトは、振りはらおうとした直後に到着した援軍により前後から抱きしめられて完全に捕縛されていた。

「……なぁ、なんで俺だけこんな厳重なんだ?」
「だってウェルトさん逃げるでしょ?」
「ウェルト、この間ルーヴェ見捨てて……逃げた」

悪戯気に笑う少女と、無口な少女に挟まれた形のままウェルトはため息を吐く。
その隣では、ルーヴェが諦めよう、とアイコンタクトを送っている。

「全く、なんで逃げようとするのよ?」

女の子、女性に完全に包囲された二人を眺めて、その館の主であるリリーは半ばあきれ気味に二人を見やる。
その言葉に対し、ウェルトはまっすぐに見返して、口を開く。

「女だらけの中に男が入るほど気まずい事はないんだという事を知っておいてくれ」
「大丈夫よ? 慣れれば」
「慣れる意味も理由もわからない」

吐き捨てるように言ったとたん、かかる圧力が上がり、顔を顰める。
横の相棒を見れば、すでに彼は館の中へと歩いていた。

「……仕方がない、大人しく入るか」
「何で結局こうなるのに抵抗するのよ?」
「だから本当に気まずいんだよ。入るのに度胸がいるんだよ。ある意味モンスターを相手にしてる方が気が楽だ」
「へぇ? 私達をモンスターと比べるわけ? ……ルカ、サフラン。やっちゃいなさい?」
「はーい」
「覚悟……してください」

ウェルトを抱きしめている二人の少女が口々にそう言って、ウェルトの顔に自分の顔を近づける。
思わずウェルトは頭を後ろに引こうとするが……。

「……えい」

背後から抱きしめていた少女が、腕を胴ではなくウェルトのわきの下に持って行って、そのまま自分の体に引き寄せるように自分の腕をL字型に折り曲げる。
結果、ウェルトは磔にされた男のような身動きの取れない状態となる。

「ちょっとまて!? お前ら一体何をするつもりだ!?」

暴れようとするが、少女の力が案外強いことと少女が下方向へと力を入れてしまっている為に自然と膝が折り曲がった状態となってしまっている。
そのような不利な体勢の為、思ったように力が入らない。

「ん、こうするつもり」

そして近づいてきた少女……ルカがウェルトの頭を抱え込むとそのまま。
自らの唇を彼の唇に押し当てた。
途端手をバタバタ振り回すウェルトだったが、肩のと肘の中ほどを固定されている為に、可動部分が肘から手の先までしかなく大した抵抗にならない。
そのまま十数秒、ルカはゆっくりと唇を離した。

「ごちそーさまでした」
「……あれか、この場合はお粗末さまとでも言えばいいのか、なぁ?」

彼の問いに答えることなく、ルカは先ほどからウェルトを抑え込んでいる少女……サフランのところに回り込み、サフランの代わりにウェルトを抑え込む。
そしてサフランは入れ替わるようにウェルトの前に立つ。

「……凄く、嫌な予感しかしねえんだが」
「大丈夫……はじめてだから」
「嫌だからそういう問題じゃなくて俺の意志は一体どこにあ……」

その反論を紡ぐ唇は塞がれた。
サフランの唇によって。
その光景を、館の中のソファに座り、窓を通じてその光景を眺めていたルーヴェは。

「……大丈夫かな?」

と、向かいのソファに横たわらせているキルスの心配をしていた。




煌びやかな外観。
その館はただの酒場。
酒場とは言いつつも、一見お断りの時点で収支は度外視。
その裏では情報のやり取りをする場。
……が、こちらも決定的なまでに客を選ぶためこちらも収支が危うい。
なら、この館の存在する意味は何か、それを知っているのは数人の男と、そこに住んでいる女性達。

「……なんでこんな目に遭わねえといけねえんだよ」
「自業自得でしょ? 逃げようとしなければいいのに」

苛立ち紛れに横たわっているキルスを足蹴にしつつ、苦い顔のままで紅茶をすするウェルト。
それを窘めつつも、苦笑を浮かべるルーヴェ。
そして女性に慣れていないため、女性だらけの空間で緊張の限界を迎えてダウンしたキルス。
三人とも、館の酒場部分にある対面型のソファに座っている他は全員が女性。
今日は酒場の休店日なので、自然とそうなるのだが、店が開いている日でも男性が来ることは少ない。

「こんな目ってなによ? こんな美少女にキスされたんだから男としては本懐でしょ?」
「ウェルト……酷い」

ウェルトとルーヴェが座っているソファの後ろから、ルカとサフランが声を掛ける。
その手にはそれぞれ果実で作られたジュース。
酒を飲める年齢ではない者もいる為に、ここではジュースの種類も豊富だったりする。

「酷くねぇ。ってかどうせやるなら俺じゃなくてルーヴェにしろ」
「だって、ルーヴェは相手いるじゃない」
「フィル姉さん……ミシェル姉さんに怒られる」

その言葉にルーヴェが手に持った紅茶を吹き出しそうになり、それを堪えて咽る。
それを見て少年は、口端を持ち上げて不敵に笑ってから一転、ため息を吐く。

「だからって俺にするんじゃねえよ」
「だって、まだお礼してなかったもんね」
「うん……」
「……んな礼なら要らねえっつってんだろうが」

ため息交じりに零された言葉。
それを聞いたのか、リリーは笑ってソファに近寄る。

「またそんなこと言って」
「ふん、俺は俺の勝手を貫いただけだ。その結果助かった人間がいたとしても俺の知ったことじゃねーんだよ、ルーヴェと違ってな」
「……僕だって、ただ目の前にあるものをどうにかしようとしか思ってないんだけどね」

苦笑するルーヴェとウェルト。
そのような会話をしていると、横たわっていたキルスがゆっくりと体を起こす。

「調子はどうだ?」
「あ、うん、なんとか……かなぁ?」
「女性が苦手って言うのも大変だね?」
「苦手じゃなくて免疫がないだけだろ。実際、こいつ職務中はきっかり対応してるし」
「仕事と私用じゃ違うってば……」
「仕事用に切り替えろっての。孤児院じゃねえんだからよ」

ウェルトの言葉に軽く頷いてから、キルスが口を開く。

「……どうにも、あそこではこの口調だと、怖がられますね」
「怖がられないようにルーヴェの口調を真似るのは良いが、段々そっちが板に付きすぎてるんじゃねえか?」
「否定はできませんね」

笑う二人にリリーは僅かに目を丸くする。

「あんた……キルスってあの生真面目な騎士さん?」
「生真面目かどうかは分かりませんが。確かに騎士の役職についていますよ」

先ほどの慌てていたものとは違い、平然と対応とするのを見てリリーは二つの意味で驚くこととなった。
何しろ先ほどまでの少年っぽさが前面に出ていた彼とは違い、今では落ち着きのある男の顔となっているのだから。

「元々、その口調で鉄面皮みたいな無表情だったんだよね。キルス」
「ええ、今ではこんな風に笑い合うこともできてますが。今はちょっとばかり冷静を装ってる感じですけど」

不思議そうな顔を見かねたのか、ルーヴェが補足をする。
そこに、さらにウェルトが尋ねる。

「で、リリー。何でそんなに驚いたんだ? 知り合い、だったりするのか?」
「生憎私は覚えがないのですけど……?」

首を傾げる三人に、館の主はふわりとした、彼女本来の微笑みを浮かべるとゆっくりと首を横に振る。
その様子を見て、ルカとサフランも顔を見合わせる。

「話に聞いただけなんだけど……まさか知り合いだったなんてね。ミュル、メルカ、ちょっと来てー!」
「ん、どうかした……ってああっ!?」
「キルスさん!?」

階上に向けられた声でやってきたのは二人の少女。
その顔を見て、キルスは合点が行ったというように手を一つ打ち鳴らす。

「なるほど、信頼できる身の置き場とはここのことでしたか」

駆け寄ってきた少女達に、元気にしていましたか、とほほ笑むキルス。
そこには先ほどのような少年の顔は無い。

「ああ、なるほど。この間の人買いの事件。お前が担当してたのか」
「ええ。私一人で好きにやれと言われたので……」
「潰したわけだね。吃驚したよ、一夜にして壊滅って噂が流れた時はさ」
「お前なら一人で出来なくはないだろうが、なぁ……」

紅茶を一啜り、キルスと少女の笑い声をBGMにして静かに目を瞑るウェルト。
ルーヴェは置いてけぼりにされていたルカとサフランの相手をしている。
静かにたたずむウェルトの隣、この状況で寝てしまったのかとリリーが呆れたように注意しようとする、と。

「リリー、記憶喪失で黄色い服を着た少女に覚えはねえか?」

目を瞑ったままのウェルトから、鋭い声がリリーに投げかけられた。

「……それが本題?」
「ああ、ちっとばかり厄介なことになりそうな予感がしてるからな。早急にケリをつける為に情報が欲しい」
「覚えはないわね。黄色い服を着た少女の目撃情報も、なし」

その会話、ルーヴェもウェルトもそれぞれ少女の相手をしているが聞き逃すことはなく気配を尖らせる。
気配に呑まれそうになったことを自覚したリリーは苦笑すると、一つ溜息を吐く。

「またこの館の住人が増えそうね? 本当、貴方とルーヴェが来てからこの館に来る人が増えて嬉しいわ。それだけ救われてるってことだもの」
「……別に、俺は金の為にやっているだけだっての。礼を言うならルーヴェに言いやがれ」
「僕だって、金の為に動いてるわけだからね。傭兵である以上」
「その割には、こちらが感知していない事件ですら解決しているようですが?」
「気のせいだ」
「気のせいだよ」

キルスの問いに同時に答えた二人の表情は、片や仏頂面、片や苦笑。
それを見たキルスは微笑を浮かべる。

「素直じゃないですね、二人とも?」
「そういう手前はどうなんだよ?」
「私はあくまで、仕事ですから」
「……汚ねえ」

感謝、というものを苦手とする三人の会話。
それを聞いていたリリーは今日何度目かわからない苦笑いを浮かべている。
と、ここでルーヴェが思いついたように口にする。

「そういえば、今日……どうしようか?」
「……今あそこに帰るのはまずいな。リリー、部屋借りていいか?」
「いいわよ? 貴方達なら別に。あ、ついでに誰か希望する子が部屋に行くかも」

その言葉を理解した三人はそれぞれ思い思いの行動をとる。
ルーヴェが紅茶を吹き出し、キルスは心の中で紅茶を吹き出して、ウェルトは呆れ顔を浮かべる。

「あのなぁ? ここはそういう事をさせないために作られたんだろうが。 後、キルスとルーヴェは兎も角として俺を希望する奴には変な男に引っ掛かろうとするんじゃねえっつっとけ」
「お礼がしたい、って言ってるのよ」
「それこそお断りだ。んな理由で受け入れられっか」

仏頂面で返す少年に、館の主はため息を零す。
他の二人に目を向けても、それを受け入れることはないという事が解ったから。

「本当、もう一度お礼を言いたいって子が多いのよ?」
「だったら別の形、言葉でのそれで済ませな。……正直、んな重いもん貰っても迷惑だ。それに何時俺が居なくなるかもしれねえのに、んなもん受け取っちまったら俺は安心して逝けねぇよ」

二人の対話。
それに多くを含んでいることが分かっているルーヴェは悲しみに瞳を濁らせ、それを隠すように静かに目を瞑る。
キルスはそれを見ていたが、何もわかることはなくただ紅茶を口に運び、沸いた疑念を頭の片隅に追いやる。

「……それでもいいという子もいるでしょうね」
「生憎俺は、そんな理由で抱きたくねえ。大体よ、それしか礼の仕方を知らねえ奴等に……色々教えてやるのがお前の役目だろ? ちゃんと教えてやれよ。言葉だけで十分、そういうこともな」
「会って数か月な人間に、良く言うわよ」
「俺は俺が言いたいことをそれ相応の人間に言うだけだからな。期間なんざ関係ねえ。……行くぞ、二人共」

踵を返し、階上へと続く階段を昇る少年。
それに追いつくように彼の相棒と少年騎士が続く。
その背を、リリーは静かに見つめていた。

「……礼を受け取らないまま、恩を返せないまま消えそうなのよ」

ぽつり、と響く言葉。

「それに、まだ若い身だというのに、逝くだなんて言葉を……覚悟をした顔で言うものじゃないわ」

それは館の中で誰にも聞こえることなく木霊した。





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狩咲 佐倉

Author:狩咲 佐倉
ネトゲとかいろいろやってます。

このブログの更新頻度は確実に遅くなる、だろう。




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