軒下の箱

やっているネトゲとか、何か書いたものとかをつらつらと。 不定期更新で行く予定

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久々の更新にして、一気に更新。
誤字脱字はあるとおもいます。








屋敷についた少年は、一人中庭を目指す。
屋敷の中にある一つの広い空間。
噴水は壊れ、植物は枯れ、生というものが全く感じられない場所。

「おい、出て来いよ」

たどり着いた少年は、中庭から続く通路へと向かって声を投げつける。

「……くく、その様子だと彼女に出会えたようだな?」

そこから顔を出したのは屋敷の主。
醜悪な笑みを浮かべ、狂気の光で瞳を輝かす男。
彼は少年の不機嫌そうな顔を見て愉悦に浸る。

「吸血鬼になった以上、血の渇望からは逃れられん。救うには唯一つ……」
「……再生速度を超えた破壊を繰り返し続け、仮初の眠りにつかせる。その後でバラバラになった体を分割し放置。体とのつながりを失った段階で……」
「粉々に破壊する。くく、やはり貴様は彼女を殺したか」
「……憎まれ役にも嫌われ役にも、汚れ役にも慣れている。それに、生憎知識はあったからな」

何時もの相手を見下すような響きを消し、ただ淡々と言葉を続けるウェルト。
怒りをかみ殺すような表情を見て、男は笑う。

「くく、あははははっ! そうだ! 私が失ったのだ! 私以外の全員が失わねばおかしい! ああっ! 絶望に飲まれろ! 悲劇に踊れ! 私を存分に満たすがいい!」

壊れた笑いが響く。
ウェルトはそれに対し、怒りをかみ殺すことを止めた。

「ったく、一々煩いんだよ手前は」

石畳を砕きそうな勢いで振り下ろされた足。
硬く握りしめられた白銀の拳。
この一時、それらは目の前の男に対してのみに向けられる。

「その口、二度と開けねぇ程にしてやるよ」

その言葉を口にしつつ、手に黒い球を転位、そのまま男に向かって投げつける。

「気でも違ったか? 私には物理障壁が……!」
「あるから投げたんだよ、下種野郎」

言葉の意味を理解する前に、黒い球が障壁にあたり弾け飛ぶ。
瞬間男の周囲を煙が包み、視界を全て奪い去る。

「くっ! 煙幕か! だがそんなことをした所で私には傷一つ……」

男は叫ぶ。
それは彼の怒りに飲み込まれそうな自分を鼓舞する為。
あの少年の怒りを受け止めるという『恐怖』に対抗する術。
だから、男は気が付かなかった。
自分がもうすでに過ちを犯していることに。

「ぐっ!?」

男の体を走る痛み。
それは数個の鉄でつくられた毬(いが)が両腕に突き刺さったが故。
ここで男は思い出す。
彼の少年は、転位の魔法を扱う存在だということを。
物理障壁など、間合いを開いている間しか意味の無いことを。

「な、舐めるなぁぁぁっ!」

叫び声。
今度は恐怖に抗う為ではなく、自らの怒りを相手に叩きつけるような攻撃的なもの。

「前と同じに、行くと思うな……小童!」

鉄毬が抜け落ちる。
痛みが男の脳髄を焼き尽くそうと暴れまわる。
だが、それでも物理障壁の維持を続け、魔法の補助する地属性の宝石がはめ込まれた杖を確りと握りしめる。
意識が痛みに持ってかれそうになりながらも、男は膝を付くことは無く煙の向こうに居るであろう敵を思う。

「天を目指すべき塔よ! 我が敵を排除しろ!」

詠唱は男の意思により魔法と成る。
魔法は世界に作用し、使う者の意思を成す。
生じるのは大地から突き上げる様に幾本も出現する石の塔。
それは煙幕をも、その中に紛れていた少年をも撃ち上げようとする。

「ちっ! 痛みを堪えたか」

何が起こっているのかを直ぐに把握。
男への追撃を止め、距離を取り、回避を試みる。
しかし、ウェルトを狙っているわけではない無差別の攻撃の為、攻撃予測がウェルトにはできなかった。

「仕方がねぇ! 俺の直感と運と神経に賭ける! 賭けんのが命ってのは笑えねえけどな!」

叫び、僅かでも男の意識を自分に持ってこうとする。
しかし、攻撃がウェルトを狙うことは無く、ただ無差別に襲いかかるのみ。
と、そこでウェルトは気が付く。
この攻撃ならば、自分を狙う必要がないということに。

「……なるほど。避けられても退路はこの塔が絶つか」

一度生まれた塔は崩れることなくそのままの姿を保っている。
つまり、時間が経てば経つほどにウェルトの逃げ場は無くなっていく。

「とはいえ、普通はこの中庭全部埋め尽くす程の魔力なんてねえよな。ま、相手が普通ではないというだけか」

避けながら自分の考えを口に出して整理。
頭の中ではこの状況を打破する案を考える。
追い詰められている状況、だがウェルトは焦ることなく何時もの笑みを漏らす。

「……はっ! こっちも普通じゃねえこと、教えてやらねえとな」

長方形の石の塔。
幾本も屹立した光景は、さながら石の迷宮。
その中で少年は、拳を引き。
石の塔へと叩きつけた。

「横に逃げれねえなら、上に逃げればいいってな」

アンカーを塔に半分ほどめり込ませた位置に転位させることで突き立てる。
そこを足場にして、塔を登り、さらにまた塔にアンカーを打ちこむことで足場を作る。
一連の行動を繰り返し、ウェルトは石の塔の頂上にたどり着いた。

「さて、ここからどうするかねぇ」

少年は思案する。
相手が作った石の迷宮、その上という安全地帯にはいるものの。

「降下しながら攻撃は無理だな。先ず俺がつぶれたトマトになっちまう」

傍にある窓から屋敷の中に侵入という手もあるが、現在それはできない。

「……時間、潰すか」

相手は血を流している。
長期戦に持っていけばウェルトが優位に立つことができる。
だが、果たして男がそこまで許すのだろうか。

「無理だろう、な」

少年がそう呟くと同時、中庭全てを石の塔が埋め尽くす。
それから今度は、端から石の塔が崩れ落ちていく。

「ちっ、やっぱりな。結局屋敷の中にしか逃げ場はねえな……」

中央へ追い詰めるように、周りから崩れ落ちる石の塔。
もし巻き込まれたら、つぶれたトマトに瓦礫が降り注ぐ羽目になる。
追い込まれた少年は自虐的に笑う。

「つまらない意地を張るな、か。……それを捨てたら、俺は俺じゃなくなっちまうんだよ」

呟いて、走り出す。
中庭に面している二階の窓。
石の塔のせいで、丁度いい高さにあるそれを目指して足を動かす。
しかし、崩れていない石の塔と窓の位置はそこそこ。
そしてその距離はさらに広がって行く。
走っている今も崩れていく石の塔を視界に収めつつ、少年はその窓に向かって思いっきり足を踏み出した。
次の瞬間、今まであった足場が崩れ落ち。
少年の体は窓に向かい宙を進む。
付加詠唱により身体能力が上昇しているとはいえ、足場が崩れたせいで彼が跳んだ時には窓と足場の距離は先ほどよりも離れていた。
つまり、その身一つで届くことは無く。
伸ばされた手は窓に触れることなく、体は重力に引かれて地面に落ち始める。
少年は、微かに笑って視線を下に向ける。







「お兄さん!」





叫びとともに少年の体は落下を止める。
落ち行く手を掴む細い腕。
その手の持ち主は、腕にかかる負荷に苦痛を感じながらも、その手を離すことをしなかった。

「今度は、私が助けました、ね!」

ウェルトの手を確りと掴んだ少女……アテリアと名乗っている少女はそう言って笑みを零した。




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「はっ!」

孤児院の正門を守るように立つルーヴェは、手の中にある剣を閃かせ黒い獣を切り落とす。
周囲を黒い獣が埋め尽くしている光景、それを眺めてから剣を確りと握り直し、呟く。

「さて、ウェルトにああ言った手前あまり無理はできないけど……」

呟きながら、ローブを着て剣を握ったルーヴェは周囲を見渡す。
孤児院を囲むように出てきた獣は数十。
間違いなく一人でどうかしようと思うのは無謀に近い物量だった。
だが。
ルーヴェは決して足を後ろに進ませることはしなかった。

「無茶だけはさせてもらうよ! 爆けろ!」

少年の言葉に反応して、目の前の黒い獣の壁が爆風で覆われて砕き飛ばされていく。
本来ならば不可能である属性を含めない言語詠唱。
どのような魔法でも、口にする場合はその詠唱に属性を示す言葉を含まねばならない。
それは万魔法を使う上で守らなければいけないルール。
だが、どんなルールにも抜け穴は存在する。

「それにしても、ウェルトには感謝だね。買いに行く手間が省けたよ」

手にしているブレスレットに嵌め込んだ赤い石を見る。
その石は火の鳥と呼ばれる怪鳥をウェルトが倒した時、その胃から出てきた赤色の宝石。
この宝石は火を表す象徴であり、この石に魔力を宿している間は火属性の魔法なら詠唱の短縮が可能な上にその威力も上昇する。

「爆けろ! 爆ぜろ! 燃えろ! 燃え尽きろ!」

連続しての詠唱、それに合わせて起こる連続した爆発。
黒い魔物の壁はそれにより吹き飛ばされる。
しかし、壁は蠢き空いた穴は即座に埋まる。その様子をルーヴェはため息を吐く。

「……これじゃ、足りないか」

ぼやいた途端、壁から二匹の獣が跳び出す。鋭い爪がルーヴェの胸を貫こうと伸びてくる。
それを手に持った剣で二つ一気に弾き飛ばし、返す剣で獣の胴体を切り裂く。
先ほどから同じことの繰り返し。
魔法を放てば警戒して防御。
撃ち終わったタイミングで数匹が襲いかかってくる。
魔法と剣を交互に振るう結果、肉体も魔力も消費されて行く。

「やれやれ、結界魔法は疲れるんだけどね。……張らないと一気に襲いかかってくるからそれよりましだけどさ」

呟いて、霧散する黒い獣を確認してから顔をあげる。
その視線の先には黒い壁、黒い獣の群れ。

「さて、僕の魔力が尽きるのが先か、君達全員が散るのが先か。……風よ、炎を纏い灼熱の運び手となれ!」

改めてルーヴェが発動させるのは二属性魔法。
二つの属性を詠唱に込めて発動する魔法であり、それぞれの属性が持つ特性を組み合わせる事の出来る魔法。
しかし、これを成すためには属性を象徴する物を、使用する属性に合わせた種類分必要とする。
たとえば今ルーヴェが詠唱した魔法であれば、風と火の両方を象徴する物を所持しなくてはいけない。
それだけの準備が必要ではあるが、魔法の幅が広がるという事は戦闘の中で選択肢が広がるというもの。
風の範囲と火の攻撃力、組み合わせた結果生ずるは火の渦。

「燃え、尽きろ!」

黒い壁の外側、ルーヴェに面している場所に火の渦が襲いかかる。獣と獣の間に生じたそれは青空の元で赤い柱を屹立させる。
吹き上げられた黒い獣は宙に舞い、その身を散らせていく。

「……悪いね。ここだけは守らせてもらうよ、絶対に」

その言葉を呟く少年の脳裏に響く、親友が笑いながら零した幾つかの言葉。
意気地がないと親友に笑われ、我儘は言っておけと親友に諭され、遠慮なんてするなと親友に怒られ、不器用すぎると親友に呆れられた彼。
だから、これからは行動で示すと誓った。
故に、ここにいる少年は決意した。
任された命は全力で守り、近くの不幸を滅ぼし尽くす。
そして、孤児院にいる人々と二人の少女に害なす者と敵対することを。
それがせめてもの、二人の少女に真実を伝えられないことへの懺悔だと。
親友に対して我慢を強いていることへの詫びだとでも言うように。
彼が自らに課した枷とも言えるほどに強い決意。
その決意が彼の恐怖を押し潰し、彼の剣を閃かせる。

「続けようか。僕と君達の、根気比べだ」

跳びかかってくる獣を迎撃しながら、隙を見て再び二属性詠唱。
黒い壁は削られながらも再建される。
それでも、彼は諦めることなく剣を振るい、魔法を撃つ。
自分を慕ってくれている女の子が戦っている以上、引く事も出来ないと、微かに笑って。



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「吹き飛べっ!」

響く破砕音。
それが黒い魔物の体を『砕き飛ばした』音だと、音だけ聞いて解る人はいないだろう。

「……吹っ切れてるね?」
「当然、あそこまで気遣われていたことに気付けなかったから……。吹っ切れてなきゃ、ね」

短剣を持ったフィル、対して両手に一本ずつ巨大な槌を握ったミシェル。
二人は孤児院の側面を守っていた。
町並みの角にある為、守るのが二面でいい上に、こちらからは入れるような入口がないため黒い獣の数はそれほど多くはない。
しかし、フィルは兎も角ミシェルに関しては戦闘経験が全くと言っていいほど存在しない。
何かを倒す覚悟の有無、それだけが他の初経験者と違うところだった。

「力は使いようだ、ってウェルトが言っていたけど……本当だね」
「ウェルト自体は碌なことに力を使ってない気がするけどねー?」

フィルはそう言いながら短剣を投げ、左手で宙に文字を描く。
短剣は見事、跳びかかろうと体勢を整えていた獣の左目に突き刺さり、それと同時に三文字の紋章詠唱が完了。
巨人型の黒い魔物へと雷が落ちる。
その周囲をも蹂躙した雷は数匹の魔物を消失させる。

「危ない!」

だがその隙を突いて、一匹のカマキリ型の黒い獣が襲いかかる。
それに気が付いたミシェルは、大地を蹴る足に、槌を振う腕に力を込める。
彼女に刻まれた魔道、身体強化の魔法は術者の意志を成すためにそれ相応の力を授ける。
それが、望まれずに与えられたものだとして。
それが、少女を幾度も傷つけたとして。
それでもこの一時だけは、それに感謝をする。

「砕けてっ!」

本来は両手で握るはずのそれを片手で、手首を使って振り回す。
その勢い全てをその身に受けた魔物は吹き飛びながら砕け散る。

「ありがと、助かったよ」
「この力が役に立てるの、この程度しかないからね」

遠巻きに様子を窺っている魔物達を二人は見渡す。
と、視界の端で炎の渦が魔物を蹂躙している様を見る。

「頑張ってるねー、ルーヴェが二属性魔法を持ち出してくるなんて」
「……なら、これ以上負担掛けると無理をさせてしまうかも」
「だったら、私達も頑張るしかないっしょ?」
「だね」

フィルは呟いナイフを投げつつ素早く紋章詠唱を開始する。
それを好機と見る獣が二匹、結界の合間からフィルに襲い掛かる。
だが。

「邪魔は、させない!」

阻む大鎚。
金属製のそれは、遠心力を全て破壊力に変えて黒い獣を砕き飛ばす。
もう片方の獣は、振り下ろされた大鎚と石畳に挟まれ霧散する。

「ありがと! それじゃ、行くよ!」

フィルはその間に紋章詠唱を完成させる。
描いた陣は、炎の塊を召喚しそこから無数の火矢を降らせる魔法。
『フレイムレイン』と名がつけられた広範囲攻撃魔法。

「降り注げっ!」

声と共に、結界の外に召喚された巨大な火の塊から火矢が黒い壁に降り注ぐ。
その身を貫き、焦がされ、黒い獣は数を減らしていく。
それでも、まだ零には程遠いと。
孤児院の少女は手の中の鎚を握り直し、傭兵の少女は投げナイフを構え直す。
戦いはまだ終わる気配を見せなかった。


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狩咲 佐倉

Author:狩咲 佐倉
ネトゲとかいろいろやってます。

このブログの更新頻度は確実に遅くなる、だろう。




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