軒下の箱

やっているネトゲとか、何か書いたものとかをつらつらと。 不定期更新で行く予定

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さて、やっと刃魔が一章終了したので久々にColors更新です。

椎菜が主役である Side E
そして誠が主役である Side M

片方は個人の物語を掘り下げ、もう片方は世界の物語を掘り下げていく感じで進んでいきます。
もちろん、二つの物語は同じ舞台で起こっていることですので片方で起きたことがもう片方に影響を与える事もあります。
また、片方で引き起こった事ともう片方で起こされたことが繋がる事もあると思います。
複雑な感じになってしまいましたが、二つの物語を楽しんでいただけたら幸いです。













「これから開会式を始める。言っておくが俺はこういうのを長くやるつもりはない。では次に校長からの話だ、引き続いて私がやろう」

壇上に居る男。
スーツにオールバックの若い校長。
それを見て椎菜は。

「今日も相変わらずだね、校長先生」

と笑いながらフェルノの手にあるカップラーメンにお湯を注いでいた。
フェルノは昨日転入手続きを済ませたばかりなのだが、書類を椎菜と共に持っていった為。
「あ、じゃぁ椎菜のクラスでいいね」
と同じクラスに転入が決定。
ついでにそれ以外の全てがその場で決まり、クラスに何の紹介もなくこうして始業式に出席している。
本来ならばありえないのだが、この学校では『いつものこと』として片づけられてしまう。
フェルノはその事実を知った時に、早まったかと後悔したが、楽しそうな椎菜の顔を見ると何も言えなかった。

「……これがお湯を注いで三分で食べれるってのも驚きだけど。いいの? 始業式とかそういうのでこういうことやっちゃいけないって聞いたことがあるんだけれど?」
「いいのいいの、校長先生の仕切る行事全部3分で終わるから丁度カップラーメンが程良い出来になるし」

技術が各々の島から流出禁止となっている為、カップラーメン初体験のフェルノは手に持ったそれを興味津津に覗き込んでいた。
だが、視線を戻した椎菜を習って、視線を校長に向け直す。
と。

「皆、元気だったかーっ!」
「「「おおーっ!」」」

今まで少々冷たい感じの声だった校長の声が一気に熱血といっても差支えがないほどに熱を持っていた。
それに呼応し、腕を上げる全校生徒。
その光景をフェルノはぽかんと見送っていた。
隣に居る椎菜も楽しげに叫び、カップラーメンを握っていない手を高く上げているいる。

「始業式! 日数少ない春休み! だが、日数は多ければいいというものではない! 日数こそ少ない物の宿題が全く無かったはずだ! その特性上春休みは楽しく遊べるはずだ! ここで聞こう! 全員、存分に遊んだか!?」
「「「遊びました!」」」

熱狂。
そう言い換えてもいいかもしれないほどにこの時体育館内のテンションは急激に上がっていた。

「一生というかけがえのない時間の中で楽しむということを忘れるほど愚かなこともつまらないこともない! 私は諸君らに人生を! 一月を! 一日を! 一時間を! 一分を! 一秒を! 遊び心を忘れずに! 楽しく! 有意義に! 面白く! 過ごしてほしい!」

テンションはとどまることを知らず、そのまま上がり続けていく。

「書物上の知識も大切だ! 理論を知ることも大切だ! だが何よりも日々を生きること全てが勉強となるのだ! 失敗も! 成功も! ただ一見何もしていない時も! それは自分自身にとって知らないうちに勉強となる! だから遊べ! 遊びつくせ! だがそれで終わりではない! 明日からの学校生活、様々なものをどうやって乗り越える!? どう目標に近づく!?」
「「「楽しみ、遊び尽くす!」」」
「うむ! それならば俺から言うべきことは何もない!」

言いきった校長は再び開会の言葉と同じテンションに戻り。

「それでは、これで始業式を終わりにします。礼」

そう、始業式を締めくくった。

「ん、ちょうどいい頃合いだよ、フェルノ」
「……うん、頂くわ」

呆然としていたフェルノは、椎菜に勧められるままカップラーメンの蓋を開けていた。








「はぁい、転校生のフェルノ・インちゃんよぉ。皆仲良くしてあげてねぇ」

教室に戻って早速フェルノの紹介が入る。
クラス替えが無かった為、フェルノしか自己紹介をする人がいなかった。
皆の前に立ったフェルノは、集められる視線に居心地は悪くしないものの、隣で紹介する教師に目を奪われる。

「……先生」
「あらぁ? 何か質問?」
「……先生、男ですよね?」
「もうやだぁ。そんな野暮なこと言わないのぉ。ミリちゃん悲しいわぁ」

そう言ってくねくねと体を蠢かせる教師の姿は。
筋肉質な褐色の体。
そしてそれを包みこむ銀色のスパンコールドレス。
日の光を反射するスキンヘッドに生えるのは茶色のネコミミ。
顔は厳つく、その目はサングラスで保護をされている。
通称はミリちゃん先生。
それ以外の呼び名は認められておらず、生徒の中では彼(?)の本名を知る人間はいない。

「……ごめんなさい」

とりあえずフェルノは突っ込みを放棄。
席に座って笑って手を振る椎菜に視線で助けを求めるも、椎菜はぐっと握りこぶしから親指を上に突き立てている。

「……これからよろしく」

だから、とりあえずその一言で自己紹介を締めた。

「それじゃぁ、フェルノちゃんはしーちゃんの隣に座ってねぇ」
「しーちゃん?」
「私の事だよ!」

聞き覚えのある声に振り返れば、長い髪と、パーカーを下から持ち上げる物体を揺らしてサムズアップしている椎菜。
フェルノが良く見れば、確かにその隣は空席だった。
この場合、隣が顔見知りだったことに喜べばいいのか。
はたまた、隣が椎菜と言うことに嘆けばいいのか。
フェルノにはまだ解からなかった。
自身が抱く感情を。
あの、能力の重圧に負けない無垢な人間に近付けていいのかと。








自己紹介が終わった後、ミリちゃん先生と名乗る教師は拳を教壇に叩きつけて。

「今日の質問は疲れているだろうからよしてあげてねぇ? もしそんなオイタしちゃった子は……お・し・お・きしてあげるわぁ」

そう言ってウインクをして教師が去って行ったために質問攻めに遭うことも無く休み時間を過ごせている。
このクラスの鉄の掟として、『ミリちゃんの言うことは聞く』と言うものがある為、皆がフェルノに対して興味深げな視線を向ける物の実際に質問に来る人はいない。
ちなみにこの鉄の掟、他には『ミリちゃんの年を聞かない』、『ミリちゃんに男?と聞いてはいけない』等が存在する。

「……ねぇ、あの人って」
「うん、心は女、体は男のミリちゃん先生だよ」

椎菜はフェルノの質問にあっさりと答える。
それを聞いてフェルノはがくりと肩を落とす。

「ねえ、この学校にまともな人はいないの?」
「まともだよ? ミリちゃん先生。教え方うまいし」
「猫耳に、スキンヘッドに、サングラスに、あのキラキラした服に……がっしりとした筋肉の先生が?」
「うん、スパンコールのドレス着てるけど、まともだよ……この学校では」

椎菜はどこか遠くを見るような眼を空に向けている。
フェルノはそれを見て、気を取り直す

「そういえばさ、椎菜ってどうして学校で話しかけない方がいいって言ったのよ?」
「あ、それはね……」
「椎菜が『イーター』と呼ばれる程の生徒だからだ」

椎菜が答えようとした所に、凛とした声が響く。
声の持ち主は、ホットパンツにノースリーブ、そして無骨なホルスターを身に着けたエルザだった。

「イーター? って、あの能力から?」
「限定とはいえ空間削除の能力だ。恐れる人間は恐れるものさ」

エルザの言葉にフェルノは納得する。
空間削除、詰る所一撃必殺と言って過言ではない能力だ。

「まぁねー。でも不便なんだよ? 体にまで影響出てるし」

苦笑しながら答える椎菜。
その顔と声からは、別段悲しんでいる様子は見られなかった。

「……確かに、あれには同情する」
「あれ?」

エルザが視線を落して呟いた声にフェルノが聞き返す。
エルザの表情は、何と言っていいかわからない、といった表情だったからだ。

「んー、実はね? 私って、女の体にも男の体にもなれるんだ」

さらっといわれた言葉。
それを理解するまで一秒の時間を要したフェルノは。

「へ?」

と、呆然と言ったような声をあげた。

「今これ女の体だけど……っと、こんな感じでね?」

椎菜がそう言ってから、その体に変化が訪れる。
パーカーを押し上げていた胸がなくなり、身長が少しだけ高くなる。
顔立ちも心持少年に見える。

「……夢?」
「現実だ。私も昔は疑ったが」

体を操作するスキル、という訳でもないことは解かる。
人は一つしかスキルを所持することができないのだから。
それでもフェルノは、信じられないといった表情でまじまじと椎菜を見つめる。

「私って、体が象徴の影響を受けやすい体質みたいでね。さらに象徴が『混沌』だったからこんなことになっちゃったんだ。自由に変えられるのは良いんだけど、自分がどっちの性別かが解からないのが困るんだよねぇ。私って、記憶なくしてるし」
「……今さらっと重い事を言われた気がするんだけど」
「……こいつはそういう奴なんだ」

信じられない生き物を見ているような顔でエルザに助けを求めたフェルノだったが、エルザは何かを諦めたような声しか返せなかった。




帰路をなんとなしに三人で歩く。
フェルノとしては、今までの生活から同年代の人間が二人も身近にいるのが少々落ちつかない。

「……とりあえず椎菜。お前は少々戦闘中暴れすぎる」
「だって……『やる時は全力だ。そうじゃないとやらずに後悔するぞ』って言われてるし」
「……今度そいつに会わせてくれ。鉛玉(プレゼント)をやるから」

さらに会話の内容が椎菜の武勇伝(誇張一切なし)の為さらに落ち付かない。
椎菜が避けられてしまう一端が垣間見える、というよりフェルノは自分の隣に爆薬満載の爆発物が有るような気分になってきてしまう。

「椎菜とかって、ダンジョンに積極的に行かないの?」

それでもなんとか話題を見つけて振ってみるフェルノ。
椎菜とエルザは考えた後。

「パーティ組んでないからねぇ」
「私もだな。複数人で行かないと中々に苦労するからな。一人ではあまり行かない」

と、返す。
フェルノは納得したように頷く。
ダンジョンには黒い獣が多く存在する上、トラップなどが多く一人では危険が多いということを思い出したのだ。

「……私の知り合いには、3分で最深階まで駆け抜けた人が居るけどね」
「……『マリオネイター』か。確かに奴なら可能だろうな。トラップが発動する前に駆け抜ける事もできるし」

椎菜がぽつりとつぶやいた言葉に、エルザが頷く。
するとフェルノが、興味津津と行った様子でたずねる。

「ねぇ。『イーター』とかその『マリオネイター』って言うのは何? 誰かからつけられるわけ?」
「んー、誰かから勝手に呼ばれる通り名みたいなものかな? ほら、名前とかだと同じ人居るから紛らわしいけど、そういうのは被り難いし」
「良くも悪くも目立つ人間はそういうものが多いな。ま、私も『クイックエンド』などと呼ばれているが」

エルザの能力は銃弾の軌跡を視認する能力である。
その為、狙いを付ける動作が他の人間に比べ恐ろしく速い。
故に、『終端への速さ』という名で呼ばれるようになった。

「……残念ながら、スキルの方の名前は付けられていない。私にはネーミングセンスというものが無くてな」
「よーし、ならばこれを気に考えよう!」
「……あー、それは私も参加確定なのね?」
「もちろん!」

諦めたような声を出すフェルノ、対して元気な声を振りまく椎菜。
三人の影は、穏やかな町の中をゆっくりと進んでいった。

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狩咲 佐倉

Author:狩咲 佐倉
ネトゲとかいろいろやってます。

このブログの更新頻度は確実に遅くなる、だろう。




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