軒下の箱

やっているネトゲとか、何か書いたものとかをつらつらと。 不定期更新で行く予定

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大変遅くなりました、刃と魔法の使い方第二章の二話目です。


展開が非常にあれです。
遠回りの上、長いです。

正直、この辺りはプロットに組み込んでいませんでした。
が、今後の展開に必要な要素をやる際に。
『あ、こうした方がいいんじゃね?』と思ってしまったのが運のツキ。
後々話を読み進んで行って、ここでこうきたか! と思ってくれたら大成功。
失敗したら悲しいだけです。(私が)

さて、そんなわけで続きを読む、から本編へどうぞ。








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『……あの、お兄さん』
『ん、なんだ?』
『お兄さんは、何かを護りたいと思ったことはありますか?』
『……まぁな』
『護れ、ましたか?』
『一応な。ま、これからは救わねえといけねえがな』
『私は、誰かを護ることが、できるんでしょうか?』
『さぁな、世界って言うのは優しくねえ。あっさり裏切ってくれるし、助けてくれることも無い。護ろうと思っても俺等の手は思いの外何も掴めねえ』
『……』
『だが、手を伸ばさなけりゃ掴めるもんも掴めねえ。……そんな、もんさ』


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少女は目を開ける。
そこには石畳と、石壁の広い部屋。
何処かの神殿にも見える空間。
少女は周りを見渡し、誰もが居ないことを確認する。

「ここは……」
「よく来たな」
「新しい挑戦者、ってところかな?」

何も居ない筈。
そう思っていた少女は声が聞こえた方へと顔を向けた。
そこには、三つの頭を持つ黒い犬と二つの頭を持つ白い犬が居た。

「……えっと、ケルベロスさんと、オルトロスさんですか?」

『何と無く』理解をした少女は確認の色を込めて尋ねる。

「如何にも。我がケルベロス」
「それで僕が弟のオルトロス」

『我等、守護を生業とする存在』

響く声。
それは五つの口から同時に発せられた、自らを誇るような言葉。
聞く者にとっては畏怖さえ感じさせるもの。
だが、少女は臆すことなく微笑む。

「なら、私も。『今』の私が名乗る名前はアテリア。アテリア・アンガード……ウェルト・アンガードの妹候補です」
「……ふむ、なるほど」
「随分とまぁ、複雑な感じだなぁ。ま、事情は知ってるから気にしないでいいよ」
「うむ。あの男に予め知識は教えられた故。失礼ながら貴様には無許可であるが、仮初の兄から教えられたのだからな。悪いが、許せ」

アテリアと名乗りを上げた少女に対し、ケルベロス、オルトロスは言葉を返す。
そして今度は確認するような言葉をかける。

「さて、あの男が確認をしていたが……今一度尋ねよう」

重い口調のケルベロス。
それよりは軽い雰囲気を纏っていたオルトロスもその雰囲気を消している。

「その意志は本物か」
「その願望は本物か」
「力を用いて守護を成すか」
「力を用いて破壊を成すか」
「心を保つ覚悟はあるか」
「心を壊す覚悟はあるか」

二頭の声が、代わる代わるに少女に問う。
少女は静かに、その全てを聞き入れる。

「我、誇り持つ黒色の番犬」
「我、誇り持つ白色の番犬」

『二つの名を以て、この問いを第一の試練と成す』

そして、二頭の番犬が最後の一言を言いきったのを確認して少女は、口を開く。
それらの問いに答える為に。

「私みたいに……何かに巻き込まれた人を助けたいという意志も願望も本物です。力は相手に破壊を与える代わりに此方側に守護を与える為の物だという事も知っています。この世に有る理不尽全てを、全て理解する覚悟はあります。そして、誰かを傷つける覚悟も」

言い切った少女は、そこで顔をあげて二頭の番犬を見つめる。
脳裏に、天涯孤独となった自分を受け入れようとしている、一人の少年を思い浮かべながら。

「けれど。理不尽を何もせず受け入れる事や」

その少年は、理不尽に抗っている。

「容易に意志を曲げることや」

その少年は、意志をを曲げずに戦っている。

「自分自身であることを」

その少年は、最期まで自分であろうとしていた。

「諦めるつもりは、ありません」

そうして少女は、二頭の番犬の鋭い眼光に向かって優しくも強い瞳を返す。
しばらくの後。

「なるほど。……あの男に負けず劣らずと言ったところか」
「いやいや、あいつはあれだよ。無理や無茶をそうとわかって押し通すから性質が悪いけどさ? この子は真っすぐで純粋だから性質はいいと思うよ?」
「確かにな」

そんなやり取りの後、番犬達の笑い声が響く。

「あ、あの……?」
「すまぬな。第一の試験は合格だ。くく、あそこまでの意志を見せられては我等も魅せられてしまうわ」

心底楽しそうに笑うケルベロス。
それを見て、オルトロスも笑う。

「確かに、あいつが選んだだけはあるねぇ。さて、それじゃぁ次の試験に行こうか」
「はい!」

オルトロスの言葉に、少女は確りと頷いた。




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「さて、どうやって暇をつぶすかね」
「この状況で何言ってんのよ!?」

言葉を荒げたミシェルが拳を放つ。
ウェルトはそれを受け流して、涼しい顔をして言い返す。

「何って? あのな、本当に危なかったら俺だって平然として……られるかもしれねえな、今じゃ」
「とりあえず! アテリアがどうして気絶したの!?」

二丁の銃をそれぞれの手に握りながら、アテリアは目を閉じて寝ている。
いきなり力が抜けたのを、ウェルトが支えて仰向けにしてベッドに転がしているので傍から見ればただ寝ているだけのようにも見える。

「あー……色々とこの場でやるのがアレな試験なんでな。意識だけ吹っ飛んでもらう訳だ」

後ろめたい事が無いわけでもないのか、ウェルトは頭を掻きながら言う。
それでほぼ全員は何と無く納得した。

「……どうして、アテリアに勧めたの? 理由があるんでしょう? ウェルト」

納得できていない一人、フィルが何時もの陽気な声ながら鋭く、問い詰める。
逃げを許さないとでも言うように、一言を投げかける。
呼ばれた少年は、それに気が付いて苦笑してから返答する。

「やれやれ、やっぱりこうして画策するのは俺の流儀じゃねえな。ま、言っちまえば罪滅ぼしと、今回の礼。後はまぁ、純粋にこいつらの使い手に相応しいと思ったんだよ」
「どうして?」
「こいつは、俺とヴェルと一緒に帰ったあの日に、言ったんだよ。護られたから、救われたから、今度は誰かにそうしたいってな」

一人、ルーヴェはアテリアの言葉に驚いていた。
だが、ミシェルとフィルは同意するように頷いていた。

「その気持ちは、わかるなぁ。私もルーヴェとウェルトに味方になってもらった時はそう思ったし。あの時の喜びを、あの時の嬉しさを、あの時の感動を……誰かに分け与えたい、ってね」
「私も分かる。こんな力、望まないで持ってきたけど……ならばせめて何かに使いたいって思うし。これを受け入れてくれる人を、護りたいとも思うよ。だってそこが、私の居場所なんだから」

それらに納得した彼らは気がつかなかった。
ウェルトがアテリアにあれらを渡したもう一つの理由を。

「……全く、お人好しすぎるだろ」

そのウェルトの呟きは、彼の口の中だけで消え。
そして、それさえもかき消すようにウェルトは言葉を続ける。

「ま、だから渡したわけだ。あの二丁の銃は正に『護る』意志、『護る』想いの込められた代物……いや、その物と言っても過言じゃねえ。相応しいだろうよ、その願望と意志にはな?」

そうして、ウェルトは木箱に収められた白銀の籠手を見つめる。
それもまた『想い』の籠った品であるが、少女が今握っている二丁の銃のように相応しい持ち手を探している物ではない。

「……あの籠手にも、なにかあるの?」

ミシェルが興味津津に尋ねる。
先ほどから口を開くのはフィルとミシェルの二人だけであり、ヴェルは次々浮かぶ疑問をルーヴェに質問する事で解消することに専念していた。

「ああ。だがまぁ……あれだな……」

答えてから、ウェルトは言葉を選ぶ。
この物語を語るべきか否か。
この籠手に纏わる、二人の男女と剣の悲劇の話を。

「……暇つぶしにはなるだろうが、決して面白い話ではないぞ?」
「呪いの物品って時点で、そうだろうと予測してたわよ」

ミシェルが答え、フィルは同意するように頷く。
ルーヴェのヴェルの方を見れば、此方も頷いていた。

「仕方がないな。ならば話すとしようか。生憎、詩人のように言葉選びは上手くはねえが……」

語り手となった少年はそう前置きをして、一息、部屋にその声を響き渡らせる。

「これは遠き世界の物語。一つの幸福と、二つの喪失の物語」

その言葉は、物語の前置きにして。
彼が払う敬意の表現。

「一人を想い、一人を愛した歌姫と。一人を想い、一人を愛した詩人。されど、世はその在り方を許さず……そこから、この喪失の物語は始まった」

そうして、ウェルトは語り出した。



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ある世界のある場所。
そこには歌姫と呼ばれる透き通った声を持つ女。
そして神の詩人と呼ばれる力強く綺麗な声を持つ男が住んでいた。
二人は毎日、歌を作り、唄を歌った。
皆、その声が、その歌が好きだった。
だけど、ある一つの事柄により、その歌は止んでしまった。
それは、戦争。
国が始めた戦争の為、詩人の男は妻である歌姫を家に残し戦場に向かった。



-------


「そう言えばお前さん、雄叫びも何も挙げねえよな?」

元詩人、現兵士である男の隣でその少年はそんなことを言いだした。
彼の纏う鎧は返り血によって斑に染め上げられ、その手もまた紅い液体が滴っていた。

「……僕は元詩人だって話はしたよね?」
「ああ」

元詩人である男は、自身から返り血を滴らせながらも、何処か遠くへと想いを馳せて語る。

「僕の妻は歌歌いでね。ここに来る時に約束をしたんだ。帰ったらまた一緒に歌おう、ってね。だから、雄叫びとかで喉を潰す訳にはいかないんだ」
「なるほどねぇ。ま、さっさと終わることを祈るぜ」
「そうだね。でもこっちが負けて終わることだけはしたくないね」

そう言って、詩人の男は左腕にある白銀の籠手……それに結び付けられた青いリボンを見る。

「へぇ、お守りか」
「彼女が結んでくれてね。これのおかげでますます死ぬことができないのさ」
「まぁ、確かに命がなきゃ歌えねえしなぁ」
「ああ、僕の命と僕の声は……妻と歌に捧げるという先約があるからね」

二人の兵士は、号令を聞き再び戦場へと向かう。
それぞれの覚悟を、原動力にして。


------


戦争が終わった頃、既に月日は五年を数えていました。
詩人の齢も二十五を数え、それでも彼は喜びに溢れた顔で自らの故郷である村へと向かいました。
国から借りた鎧を返した為、詩人の服に身を包み。
それでも、その両腕には白銀の籠手。
左の籠手に結び付けられた、一度も血で染める事の無かった青いリボンを風に揺らし、心を躍らせながら帰路を歩く。
そんな彼が、村に着いた時……。

------


「なんだよ……これは」

故郷へと帰った彼が見たのは、一面の赤。
それは彼が見慣れてしまった、人の零す生命の証。
思わず駆け寄った彼は、その赤の中に沈むように倒れている人の姿が見えてきました。

「宿屋の女将さん……リグレさん……」

それらの人に生気は無く、ただ彼に見知った顔を見せるだけ。
彼ははっとして、自身の家へと向かう。
そして視界に飛び込んできたのは。
燃える自分の家と、野党と思わしき複数の男に連れ去られそうになっている女。

「その手を離せっ!」

彼は言うなり、駆け出して。
野党達を切り伏せる。
返り血を浴びるのも構わず、そのまま愛しい彼女を庇うように立ち、向き直る。

「アル!?」
「大丈夫かい、シャ……」
「危ないっ!?」

一言を交わす間もなく。
彼に向って放たれた矢。
それに気が付いた彼女は。
彼を突き飛ばす事が不可能だと解かって。

その身を盾に、彼を護った。


「シャ……」

ふらりと、地面に倒れる彼女。
その向こうには、矢を撃ったと思われる野党の仲間。
野党には目を向けず、彼は崩れ落ち、倒れた彼女の側に膝をつく。

「シャンテ……」

愛しい彼女の名を呟いた彼は、息も絶え絶えな彼女の顔を覗き込む。

「アル、バート……」
「しゃべらないで、手当をすれば……」
「駄目よ。早く、逃げて」
「そんな、君を置いてそんなことが……!」
「私は、わかるわ。もう、駄目よ……。だから、貴方だけでも……」
「君が居ない世界で生きろと!? 僕にそう言うのか君は!?」

慟哭。
されど、返る声は弱々しく。

「ごめんね。愛して、いるわ、アルバート……」

その一言を最後に、彼女の唇は二度と、歌を紡ぐことは無かった。




呆然としていた彼。
そんな彼を、下品な声を響かせた野党が近づく。

「ちっ、女め。余計なことを……」

その野党は、最後まで言葉を言いきる前に、投げつけられた剣により絶命した。

「……ごめん、シャンテ」

アルバートはそう呟くと、左手に嵌められた青いリボンが結ばれた籠手を外し、シャンテの遺体に抱かせた。

「それは持っていて。僕にはもう、それを持つ資格は無いから」

アルバートはそう呟いてから。

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」

涙を両眼から零し、空を見上げ、叫んだ。
それは神の詩人と呼ばれた頃の綺麗な声ではなく。
荒々しく、枯れた、綺麗とは言い難い声になっていた。

「もう、歌を歌うことはできない。僕は……」

ゆっくりと、喉に剣をつき刺されて絶命している野党の遺体へと近づく彼。
そのまま、未だ籠手の着いた右手でその剣を握り、引き抜く。
彼の目は、どこまでも鋭く。

「……君と歌に声を捧げたんだから」

枯れた声で、呟く彼は。

「……ごめん、君はこんな事を望まないかもしれない。だけど、僕は止まれない」

そうして、自身を焼く怒りに身を任せた。


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かくして、喪失の物語は始まった。
彼の者は右手に籠手を付け、世界を彷徨い歩く。
そうして自身を焼く怒りのまま身を任せ、野党と名乗る全てを滅ぼした。。
その後、彼は笑ったまま……。

-----------

「さて、彼女には会えないと思うけど。やることも無くなったし……。ああ、でもできれば……」




      ―― もう一度、彼女と歌いたかったな





彼の唇は歌を紡ぐ事は無く。
彼の腕は、弦を弾く事は無く。
彼の願いは、叶えられる事無く。
彼は自ら、自分の生に幕を下ろした。

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狂戦士、そう呼ばれた彼の籠手は彼女を思う『想い』の為、呪いの籠手と化した。
歌姫、そう呼ばれた彼女が最期に抱えていた籠手は彼を思う『想い』の為、呪いの籠手と化した。
最後まで彼が握っていた剣は、その慟哭に乗せられた『想い』を纏い呪いの剣と化した。
そうして、月日は流れ……。


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「俺の所で、再会を果たしたってところだ」

そうして、ウェルトは物語を締めくくった。
聞いていた二人の少女と二人の少年は沈黙したまま、語り手の少年を見ていた。

「どうした?」
「……いや、なんというか。悲しい話だと思ってね」

ウェルトの問いに、ルーヴェが答える。
それに同意するように軽く頷く三人。

「かもな。ま、その物語の続きは未だ語られずってことで終いにしとくか」
「続き、あるの?」

ふと、フィルが語り手に問う。
その瞳は、如実に語っていた。
彼の人らは、そこで終わってしまうのだろうか。
悲劇に割かれたままの二人で、ずっと居続けるのかと。
だからこそ、今までの偽りの笑顔も、何もかもを消して。
語り手の友人にして、一人に恋焦がれる女としての言葉とした。
彼の人たちが、悲劇で終わるのは納得がいかない、と。

「……どうだかな。生憎俺が知っている喪失の物語は、ここで終わりだ」

だが、語り手たるウェルトの言葉はどこまでも淡々と、事実を述べる。
そんなウェルトに、フィルは一瞬だけ鋭い視線を投げた後。

「……そっか」

そう、一言漏らした。



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狩咲 佐倉

Author:狩咲 佐倉
ネトゲとかいろいろやってます。

このブログの更新頻度は確実に遅くなる、だろう。




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