軒下の箱

やっているネトゲとか、何か書いたものとかをつらつらと。 不定期更新で行く予定

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大変遅くなりました。
刃と魔法の使い方、更新です。

今回の展開は急転直下と言っても過言じゃないです。
あとがき、を書くことができないのでネタバレを承知で書きますと、打ち切りではありません。
超展開ではありますが……無理があり過ぎたかな。
一先ず、このような展開になりました。
伏線未回収なのは、意図しての事ですので多めに見てください……。

前回言った通り、『刃と魔法の使い方』に関しては第三章で完結します。
が、面倒くさい物語構成にはなりました。
そして、作者にも何時完結できるのか解からなくなってきました。
ただし、今度から諸事情で止まっていたColorsの連載もできるようになりましたので……。
……アレ、さらに何時終わるのか解からない感じに?




美術館の中、一人の少年と二人の少女が歩いていた。
少年の姿は麻の服の上に青を基調としたローブを羽織っただけの簡素な格好。
一人の少女は、シスター服にスリットを入れて動きやすくした服。
もう一人の少女は、体にフィットするような皮の服の上に、同じく皮をなめした上着を羽織っている。
こちらも動きやすさを優先した服で、太ももや二の腕が見える服になっている。
上着を着ているせいで二の腕から先は見えないが、健康的な太ももは周囲の目を引く。
というよりも、この三人が美少年、美少女と言ってもおかしくはない風貌の為に目を引いているのであって、一部に目が行くのはその中の一部である。

「そう言えば、英雄の話の原本って呼んだことが無いや……」
「あ、そう言えば私もー。ねね、ルーヴェは知ってる?」
「あー……いやまぁ知ってはいるんだけどね」

躊躇する。
今見ているのは、三人の英雄が『魔王』と対峙する絵。
その絵の前で話していい事柄だろうか、そこまで考えて少女達の方をちらりと見る。
……ルーヴェの負けは、二人の物欲しそうな視線を見た瞬間に決まった。

「ごめん、親友……」

そう、口の中だけで呟いてからルーヴェは口を開く。

「原本が無いのは当たり前。実際はシルファニア……シルファニア・ガルフィートの手記から書き起こされた物語だからね。いわばその手記が原本と言った方がいいかな?」
「へー……」
「そういえばさ、物語だとシルファニア様とバルト様が結婚して王国を統治したってハッピーエンドだけど、それは本当なの?」

ルーヴェは頷いてから補足する。

「本当だよ。実際に『剛剣』のバルト……バルト・キサラギはシルファニアと結婚して国王の座についてたよ? ちなみに『魔法剣』のティルファ・ガルフィートはそのまま国に戻って……隙を見てはいちゃつく二人の監視役になってたけど」
「……へ?」
「あー……まぁ、本に書いてあるバルト様の告白みるとそうなってもおかしくないよねー……本当ならだけど」
「実はそっちも本当。恐らく出回っている本には書いていないだろうけど、ティルファは後にあの告白を『聞いているこちらが死にたくなった、恥ずかしさで』と評するほどだったらしいね」

ルーヴェの言葉に二人の少女は頷く。

「えーと確か。『俺は元の世界に帰りたくない。元の世界には、お前が居ねえ』から始まってたっけ?」
「『祖も捨て、親も捨て、世界も捨てた。でも、お前だけは捨てられねえ。全てを捨てた今だからこそ言えることだが……お前が、欲しい』……って、すごい文句だよねー。臭いというか、何と言うか……」

聞く人全員が、甘過ぎて糖分過多になると言われるほどの『異世界の英雄の告白』。
英雄たちの伝説とともに、それもまだ残っている。

「これが全部で五分も続くんでしょ? すごいよね」
「普通の人なら引き受けないけど……言った本人がこの顔してたら流石に落ちるかもねー?」

フィルの視線の先にある絵。
そこには、金髪の女性が黒髪の男性に庇われていた。
男性の顔は精悍であり、意志の強そうな瞳を湛えていた。
片手には女性を抱え、もう片方では少々形の変わった剣を構えているその姿からは『護り抜く』意志が絵を通してでも伝わってきた。

「確かに格好いいかも? ワイルド、って言うのかな?」
「戦い方も実際その通りだったらしいよ? 『剛剣』の二つ名の通りに敵の群れのど真ん中に突っ込んで暴れて制圧するとか、片手で魔物を殴りつけながらもう片方で切り裂いて、それから回し蹴りとか……剣術以外も使っていたみたいだし」
「詳しいね?」
「一応魔法使いだからね。色々と勉強しているんだよ」
「なるほど。そう言えばルーヴェって研究もしているんだったよね」
「うん、一応ね」
「さらっと流してるけど、その世界じゃ知らない人はいないと思うんだけどなー」

事実、ルーヴェの研究である移動中の紋章詠唱だが、この分野の一人者である上に研究の進度も速く他の人間から一目置かれている。
さらに、紋章詠唱を移動中に行えるようにする手段にまで論が伸びている為、騎士団関係者も注目している。
だが、ルーヴェは自身が開発した『紋章をあらかじめ描くことによる詠唱の短縮』については公表していない。

「ははは、自覚は無いんだけどね」

と笑いながらルーヴェは気がつく。
さきほどから自分たち以外の客が見えない。
たしかに見れ慣れているものだが、ここまで寂れているわけはないはずだ。
頭の中の警鐘が鳴り響く。

「ミシェル、フィル……僕の近くにいてくれないか?」

言って、剣に手を掛ける。
室内であるが故に、切り札は使えない。

「う、うん」
「……援護は?」
「……あまりして欲しくないね。僕の嫌な予感が当たるのなら、山賊や魔物よりもある意味において厄介な相手だからね」

最悪な予想を立ててしまえる自分に嫌気がさすが、ルーヴェはそれを顔には出さずに耳を澄ます。
その最悪な予想を裏付けるかのような、甲冑の音と複数の足音。
甲冑の音から、大体二十か三十だと予測し、手に力が入る。

「ああ、僕としても会いたくない人が来るかなぁ、これは」

ルーヴェは呟き、入口がある通路へと目を向ける。
逃げないのは、もう片方の通路からも甲冑の音が響いている為。

「あー、二人とも。何言われても怒らないでね? 相手の思う壺って言うか、面倒なことになるから。……無理かもしれないけど」
「大丈夫。ウェルトよりは短気じゃないわ」
「同じくー」
「あはは……ウェルトだったら息してるのを見た瞬間に顔を掴んでから、口の中に鉄毬を転位させてぶん殴ってるよ」

ルーヴェは軽口のように返したが、冗談でも何でもない。
事実彼はそれをやろうとしたのだから。
実際やったら舌が千切れて出血多量により死亡『してしまう』のでやらないらしい。

「……さて、来たよ」

ルーヴェの視線の先……二つの通路からは甲冑を来た騎士の姿。
そしてその先頭に立つのは。

「貴方達ですね。この間の『魔獣』に対して引けを取らず殲滅した人達は」
「さぁ、人違いじゃないかな?」

ルーヴェが言葉を返す。
その表情は、硬い。
フィルとミシェルは、先頭に立ち声を放つ少女の姿を見て驚愕の表情を浮かべた。

「……王女近衛騎士団長。シェルティ・ヴァーライン」

その人物の名前と役職。
それらがどういう人物を指すか嫌というほど理解していたルーヴェは目を鋭くして睨みつける。
銀の胸当てに銀の籠手、銀の具足。
鎧の中でも軽装なのか、太ももが見えるタイプの鎧を着こんでいる。
それらの全てが高い魔法防御能力を保持していることを知っている為、ルーヴェは戦闘を避けたいと考えていた。

「私の名前を知っているとは、驚きですね?」
「ちょっとね。色々と知らなきゃいけなくてね。さて、それで何の用かな」

だが。

「いえ、ちょっと貴方達に……『王女近衛騎士団』に入っていただこうと思いまして」

その言葉を聞いた瞬間。

「断る」

ルーヴェの中で戦闘を避けるという考えは消失した。
そしてその瞬間。
ルーヴェの体を『内側から』黒い刃が貫いた。


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地下にある牢。
ここは犯罪者を一時的に入れておく牢である。
そこに今、キルスは訪れていた。

「……大丈夫ですか? シャルト・ガザンドル」

彼に話を、聞く為に。

「……ええ、大丈夫ですよ。何か聞きたいことでも?」

返ってくる言葉は落ちついたものだった。
それを聞いてキルスは思い出す。
ウェルトがこれを聞いた時の第一声を。

「……『そういうことか』、でしたっけね」
「彼が、言った言葉ですね」
「ええ。その真意も聞きたいのですけれど……話してはくれないのでしょう?」
「残念ながら。これはせめてここで押しとどめなくてはいけない事です」
「話せば罪は軽くなるかもしれませんよ?」
「罪など……軽くなどはなりませんよ。私がやったことは事実なのですから。……して、その真意『も』ということは他にも聞きたいことが?」
「ええ……『黒い魔物』について教えていただきたい」
「……それなら資料を提出したはずですが?」
「え……?」

資料。
キルスは、そんなものは提出されたという記録を受け取っていない。
というより、この事件の記録にそんなことすらなかった。

「……まさか、そちらにまで回っていないのですか!?」
「え、ええ」
「くっ、まさかそこまで手が……?」
「何のことを言っているのですか?」
「……いいでしょう。断片だけ教えます。聞いたらすぐに騎士をやめて逃げることをお勧めします」
「? どういうことですか?」
「私が引き起こした事件。その裏で糸を引いているのは……」

階上で響く悲鳴。
ふと横を見れば、この牢の牢番をしている人間が剣を抜いて此方へと駆け寄ってきた。
その目に生気はなく。
あるのは唯の敵意のみ。

「なっ!」

瞬時に判断。
相手の身より自分を優先したことが幸いし、相手の剣を防ぐことに成功。
そのまま相手を前蹴りで蹴飛ばして距離を置く。
それから剣を寝かせて峰で頭を思いっきり打ち抜く。
頭を揺らされた牢番はそのまま気を失って倒れた。

「……いきなり? いや、今は……」

キルスは牢番の腰から牢のカギを取りだすと、シャルトのいる牢の扉の鍵を開けた。

「貴方には来てもらいます。何が起こっているのか、説明してもらわないといけませんから」
「……ええ。私がこの件の結末にかかわれるならば……何でもしましょう」

シャルトは覚悟を決めたような声音で呟くと、牢の外へと一歩踏み出した。

「私の不始末。あの少年ばかりに背負わせてたまるものか……!」

確固たる意志の元、堕ちた呪術師は再び立ち上がった。


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少女が落ちた先は暗闇だった。
何もない空間。
あたりを見回して、それを確認した少女はため息をひとつ吐く。

「第3の試練って、一体何なんですか」

呟くと、何やら服のポケットに紙らしき何かが入っていることに気がつく。
広げてみると、そこには一言。

『第3の試練なんてものは存在しない。まぁ、悔いのないようにしておけ。 by Welt Angard 』

「……? どういうことでしょうか?」

紙を仕舞い、顔を上げる。
広がる暗闇、だけだと思った少女は驚愕に目を見開く。
そこには、二人の人物。
女性と男性。
ブロンドの長い髪を持つ女性と、黒い短髪を持つ男性が並んで少女を見ていた。

「な、なん、で……?」

その二人は、幾ら焦れようとも二度と会えない人物だった。
否、会えないはずの人物だった。

「どうして、ここにいるんですか……?」

だからこそ、少女は驚き、呆然と頭の中に浮かぶ疑問を口にしていた。
だが、その表情には驚きの他に恐れ、そして喜びが混ざっている。
何故ならば。

「お母さん、お父さん……!」

その二人は、少女の両親なのだから。

「……久しぶり。命」
「会いたかったぞ、命」

微笑む二人に、少女は……アテリアは警戒心を抱く。
だが、まぎれもなくオルトロスとケルベロスに害意はなく、目の前の存在も気配……いや。
そこに確実にいるということを感じる。

「ど、して……?」
「あー、それを説明するとだな。ええと……忍足ま……思い出せないな。なんか少年が来てな。『手前等が置いてったもんに会わせてやるからついてこい』って」
「お兄さんが……?」

確かに、彼の義兄が言いそうなことではある。
……もっとも、どうやってこんなことをしたのかが少女にとっては疑問だった。

「なんでも原理は解からないのだけれど。魂だけの空間なら問題ない、とか言ってたわね。察するに、私とこの人の魂を『死者の国』から引きずりだして、命の魂と引き合わせたんじゃないかしら? この空間で」
「お兄さん、って言ったけど……。俺が死んでからどんな知り合いができたんだ?」
「あら、私が死んだ後ですよ。少なくともあの人のような目立つ知り合いがいれば気が付きますからね。下手すれば禁忌であることを、正当な方法でやってのける方がいるとは……」

二人が何を言っているのか、少女が理解するのに時間がかかった。
それはつまり。
あの義兄が人には到底できそうにないことをやってのけたのだ。
死者の魂を、『死者の国』と呼ばれる場所から連れ出すという所業を。

「……そもそも、死者の国なんてあったの?」
「あったぞ。死んでるから元気にとは言えないが楽しくやっている。ああ、そう言えば聞かれたな。『王は元気か』って」

人をやめたり、人とは思えない事をやったりと、どうやら自分はとんでもない人の義妹になったらしい。
それを実感した少女は、笑う。

「実はそのお兄さん……私のことを義妹として引き取ってくれるそうです」
「はぁっ!?」

「あらあら、まぁ。よかったわねぇ」
「いやいや母さんよくはないだろう!? 年頃の娘が! 義理の妹だぞ!? 理性が何時切れてもおかしくない! 何しろこんなに可愛いんだからな!」
「確かに命が可愛いのは認めます。ですが彼は……何と言うか私は老成した……というよりは枯れた印象しか抱かなかったのですけど。あともしかして彼は王が何時も言っている『名脇役』のことでは? 『馬鹿女王によろしく』とも言っていましたし」
「む、確かに。……確かに、黒髪、15に見えぬ長身、鍛え上げられた体、傲岸不遜、唯我独尊。共通点は多いな」

混乱の末脱線する二人を見て少女は笑う。
そういえば、このような風景を見ていた記憶がある。
忘れかけて……否、忘れていた記憶であったがそれを今、少女は確かに取り戻していた。

「あら……命どうしたの?」

気がつけば、少女の頬を雫が濡らしていた。
驚きの連続で実感はできなかった。
だけど、もう二度と話せないと思っていた人達ともう一度会うことができたのだ。
喜びを実感し、そしてこの機会を与えてくれた義兄に感謝し……その出会いにすら感謝をした。

「だって、だって……もう、会えない、って……っ!」
「父さんも、母さんもそう思っていた。……嬉しいよ、こうしてまた話せる日が来るなんて」
「私もよ。命……会いたかった。ごめんなさい、あなたを残して逝ってしまって」
「う、ううん。だって、私が……」
「悪くなんてないわ。私は、私がするべきことをしただけだもの。手段は間違っていたかもしれない。でも、後悔はないわ。……こうして、あなたが生きていてくれているから」
「お、お母さん……!」

母の胸に飛び込み、そのまま泣く少女。
彼女の母は、優しく背を頭を撫でてやっていた。

「あの、ね。私、人間じゃなくなっちゃったの……」
「ごめんね、私のせいで」
「俺の、せいでもあるな」
「ううん、いいの。だってね、お兄さんも、ルーヴェルトさんも、フィルミアさんも、ミシェルさんも……受け入れてくれたんだもん」
「そう、いい人達に出会ったわね」
「うん。それにね、孤児院の皆かわいいの。この間も、ミナとティールが騒いでヴェルス君に怒られてたから、慰めてあげたんだよ……」

少女の口調は年相応のそれに戻っていた。
記憶を失い、自分を見失った時も。
自分を取り戻し、それでも我慢しなくてはと思っていた時もあった。
だから、口調は固かった。
だけど今は、少女はぬくもりに甘えていた。
それからアテリアは語り続ける。
今まであったこと、言いたかったこと。
自分は今、こんな人達に囲まれているのだということを。
そうして過ぎ去る時間は、あっという間に消費されていく。

「……そろそろ、時間か」

その言葉に、少女は俯く。
この邂逅がありえないものだと理解している。
奇跡なのだと理解している。
それでも、辛かった。

「二度目の、別れ……」
「ごめんね」
「ううん、謝ることなんてない。だって、私は生きてるんだもの。だから、ありがとう」

ここにはいない少年に対しても、少女は心の中で呟いた。

「本当に、ありがとう」

二人の姿がだんだんと後ろに遠のいて行く。
少女は一歩も動けない。
いや、動かない。

「……元気でね」
「いつでも、見守っているぞ」

二人の声が届く。
少女の目から、押しとどめていた涙が再びあふれだした。

「うん……」

一組の男女は、励ますように言葉を続ける。

「この先、何があっても諦めないで……」
「辛い、辛いことが起きる。けれども……諦めだけは、しちゃいけない」

それがどうい意味を持っていたのか、少女にはわからなかった。
だけど、確りと、頷いた。

「うん、頑張る、から」

少女は二人の姿が消えるまで、手を振って見送っていた。
そうして、二人の姿が消え、暗闇の中で一人残された少女は……。

「う、う……うわぁぁぁぁぁぁぁっ!」

今まで貯め込んでいたものを吐き出すかのように、何時までも、何時までも泣き続けていた。


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「さて、と。兄弟。こいつらとの交戦経験はあるか?」
「一応あるな」

周囲を囲む黒い獣。
騒ぎを聞きつけて、町の入り口まで見に来た結果がこれ。
厄介事は次から次へと尽きない、そう思ってウェルトは苦笑を洩らす。

「……やれやれ。兄弟、一体貴様は何をやっている?」

対する雅也は、呆れたように溜息を吐いて刀に手を掛けている。
その問いに対し、ウェルトはなんでもないことのように返す。

「ダチの命を救うために世界を救おうとしてるな」
「……我ながら、貴様とほぼ同じ血が入っていると思うと恐ろしく思うぞ」
「だろう? 俺もだ。……さて、はじめるか。町に入れるわけにはいかねえからな」
「承知」

飛びかかる黒い獣二匹。
それらをまとめて横一閃で斬り伏せる雅也。
そこからくるりと回り、その勢いを乗せた薙ぎ払いを獣の群れに撃つ。
群れであるがゆえに後ろに避けることのできない黒い獣は数体が両断される。
それと同時に三匹の獣が隙をついて飛びかかる。
雅也は後ろに飛んでそれを避けると、着地と同時に前に大きく踏み込む。
そのまま切り上げ、袈裟切り、突きでそれぞれ着地したばかりの獣を屠る。

「おーおー、流石、流石。剣を継いだだけのことはあるなー?」
「訂正しておけ、継がざるを得ん状況だっただけだ。全てが俺の意志だったわけではない。だが、こうして役に立ってしまうと何とも言えないのが悲しいところではあるな」
「ま、案外そんなもんだろうなぁ人生ってやつは」

ウェルトは雅也から離れたところを突破しようとする獣を殴り倒す。
飛びかかってくる獣の頭を、籠手を嵌めた右手で受け止めアンカーを獣の両目に転移。
視界を奪われて暴れる獣を群れの中に投げ込んで障害物とし、侵攻速度を低下させる。
それを乗り越えてくるものを各個撃破しつつ、周囲を見る。
すると、ウェルトの視線の先に騎士の鎧を付けた少年と、茶色のローブをまとった人が駆け寄るのが見えた。

「へぇ、アイツもいい仕事するじゃねぇか」
「何、どうした?」
「援軍だ」

飛びかかる獣を殴り、蹴り、穿ち消滅させていくウェルトと、斬り、打ち払い、消滅させていく雅也。
その間を、剣が駆け抜けて獣を大量に消滅させる。

「……ウェルト。何時かするんじゃないかと思っていましたけど。分裂しました?」
「OK、手前が俺のことをどう思っているのか解かる一言ありがとう。後で殴る、アンカー付きで」
「兄弟、貴様のその言動が原因ではないのか?」
「……うるせえ。一先ずだ、こいつは俺の兄弟だ。納得しろ」
「はぁ、君がそういうってことはそうなんでしょうね?」

キルスは軽口を叩きながらも剣の群れを操り獣を屠る。
だが漏れるものがあり、それらをウェルトと雅也の二人が対処する。

「……で、覚悟は決まったかよ。呪術師」
「ええ。君一人だけに……僕の後始末までやられたのでは敵いませんからね」

ウェルトが目を向けるのはシャルト。
アテリアを半魔にした、呪術師。
それでもウェルトは、笑って受け入れる。

「そうかい。だったら足手まといになるんじゃねえぞ。後はきっちりアテリアに謝っておけ」
「勿論です。後者は当たり前ですが、前者は……私を舐めないでいただきたい」

シャルトは腕杖を獣の群れに向ける。
そして一言。

「呪、捕らえよ」

それだけで群れから飛び出ていた数匹の獣が動きを止めた。

「呪、締め上げ壊せっ!」

動きを止められた獣が爆砕する。

「……なるほど。そういやカザンドル一家は呪術師一家として名をはせていたんだったな。まぁだからこそ俺が出たわけだが」
「呪いに対する圧倒的なジョーカーだからねぇ。ウェルトは」
「なるほど。俺と貴様は真逆というところか……呪・鵺式!」

刀を地面に突き立て雅也が吼える。
そこを中心として、黒い霧が生じ獣の群れを包み込む。

「鵺の毒息。逃れること、敵わんと知れ」

雅也が刀を引き抜くと同時に霧は晴れ、そこにいた黒い獣は体の表面を溶かされ、足を地面に付くことができなくなっていた。
これにより黒い獣の侵攻の際には、彼らが障害物となってくれる。

「……鵺式使えるなら最初からやれよ」
「阿呆。忘れたか? これには準備が必要なのだぞ? 地脈の把握も必要なのだし、評価されることはあってもけなされることはないと思うがな」
「あー、あー。そういやそこから始めねえといけねえのか。安心しろ。ここらの地脈はあの城を中心に放心円状に広がってるから。さながら蜘蛛の巣だな」
「理由は?」
「至って単純。『俺の敵』が、色々やらかそうとしていてな?」

ウェルトは何かを思い出すようにしてから、拳を固め、それを黒い獣へと叩きつける。

「ま、ただ、それだけだ」

軽い口調とは裏腹に、ウェルトの噛み締めた口から血が一滴垂れていた。
それを見た雅也は。

「……そうか」

鬼気迫る表情に、それだけしか返すことができなかった。
そして、その表情は一瞬にして一変した。
絶望へ、と。

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「ルーヴェ!」

倒れたルーヴェに駆け寄る二人。

「ぐ……あ……」

だが、彼女達に回復魔法は使えない。
よしんば、使えたとしてもその力は僅かである。

「ふふふ、まったく……最初からこうしていればよかったのですね」

鎧を身にまとった少女の姿が変わる。
その姿は、黒い影。
その声は、中性的。
だが、その様子も彼女達の眼には入らなかった。

「ああ、ヒーローは死に、ヒロインは泣き崩れ、この世界に希望が消える! 何と甘美な、何と美しい、何とも筆舌に尽くしがたいこの感動!」

狂ったように、歓喜に打ち震えるその影は笑う。
愉悦に唇を歪ませて狂ったように笑う。
そして、一つ指を鳴らす。
それだけで、彼の手駒である騎士は泣き崩れる少女の意識を狩り取り、連れ去る。
同時に、他の騎士をもまた去っていく。

「ああ、これにて一件落着。御敵殿の顔を見れないのはある種残念ですが。ああ、彼の絶望に歪む顔を、苦痛に歪む顔を、一度はお目にかかりたい物です……。我が怨敵にして、我が道を邪魔する自称ただの人間……されど彼一人では何もできない。故に、この世界は喰らわれる。希望など無く、無慈悲に、ああ、無慈悲に。そう、他の誰でもなくこの私に喰われてしまう」

哄笑。
それは、誰もいないその場所に響いた。

「救い手の役を担う者は失われた! 救い手は一人でも欠けてはならぬ役! 代役など無く! それ故にこの世界は最悪の終焉(バッドエンド)を迎える! それがこの世界の本当の道! 希望によって変えられぬことがない運命! そう、あの忌々しい女狐でさえ曲げることしかできず! 覆す事など何があろうともできぬもの!」

胸から血を流し倒れているルーヴェを一瞥する影。
その口元は先ほどからずっと、笑みを形作っていた。

「君のおかげで、助かりましたよ? ふふ、我が宿主も……最後の最後で自分の欲を優先させるとは……随分と相性がいいようです。くくく、あははははははははっ!」

笑いながら、その影は溶けて消える。
そして残されたのは一人の息絶えようとしている少年。
そのままならば、彼の命は失われるはずだった。
彼の息遣いのみが聞こえる空間。
だが、そこに異音が響く。
それは慌ただしい足音。
それらの主は、ルーヴェの様子を見ると息を飲んだ。
だが、その中の一人……黒い衣に身を包んだ少年は迷う事無く懐から一枚の硬貨を取り出して、指で弾いた。






―― 運命のコインは回る。
    それは、この物語の終わりを告げる事無く。
    奇跡を起こす物語の始まりを告げる為に。
    地面に、落ちた。



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狩咲 佐倉

Author:狩咲 佐倉
ネトゲとかいろいろやってます。

このブログの更新頻度は確実に遅くなる、だろう。




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